研究課題/領域番号 |
23590904
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
榎本 美佳 久留米大学, 医学部, 助教 (10360281)
|
キーワード | 予防医学 / 老年医学 / 前向き研究 |
研究概要 |
健康で長生きということは日本人だけでなく世界中の願いであり、永遠のテーマである。 DHEAS (Dehydroepiandrosterone Sulfate)は生体の恒常性維持に欠かせない役割を担っていることが明らかになってきており、抗糖尿病作用(耐糖能改善作用)、抗肥満作用、抗動脈硬化作用(血小板凝集抑制作用・平滑筋増殖抑制作用・泡沫化抑制作用など)、免疫賦活作用、抗骨粗鬆症作用など多彩な作用が報告されている。“若返り”の特効薬として脚光を集めているが、その作用については不明な点が多く、人体の恒常性維持や老化予防に好影響を与えるステロイドであるかどうかについては未だ論議を呼んでいる。 以前、DHEAS値は長寿を示すホルモンであることを報告しており、本研究ではこのホルモンに着目し、DHEAS値が高値であることは長生きだけでなく認知機能を維持する作用をもつかを疫学的に解明する。この結果により、DHEASを測定することにより医療現場で予防医学の面から臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的とする。 このことより、長寿としての意義のみではなく抗認知機能を伴いかつ抗老化作用を持つことが、予測される。精度の高い世界七カ国共同研究からうまれた、平成21年(2009年)の住民検診をもとにDHEASと認知機能との関連を疫学的に検討し、十分な睡眠をとることでDHEAS値を維持でき、認知機能低下を予防できるかを、保存血清によるDHEAS値の測定を行い、データベース化を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
久留米市田主丸町にて平成21年(2009年)に1943名の一般住民検診をすでに行っている。また、全員の血清を保存している。平成24年度計画上、「凍結保存をしている血清を1943名全員分溶解し、RIA法にてDHEAS測定を行う」と示しており、今年度すべての血清でDHEAS測定が行えた。また、検診データとともに、DHEAS値もデータベース化を終え、解析が行えるまでに到達した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、DHEASと睡眠時間や認知機能との関連を疫学的に検討することである。研究計画は以下のとおりである。i:平成21年度に行った検診のデータサンプルを整理し、解析用に保存する。ii:検診で収集した保存血清を溶解し、DHEASを測定する。iii:測定結果はiで整理したデータとともに保存する。iv:DHEASと睡眠時間、認知機能とおの関係を統計的に解説する。v:解析結果をもとにDHEAS値が高値であるほど認知機能の維持が認められ、その背景に十分な睡眠がとれているかを検討する。 久留米市田主丸町にて平成21年度に1943名の一般住民健診をすでに行っており、全員の血清を凍結保存している。その保存血清により、DHEASの測定を今年度終了した。また、これらはすべてデータベース化できた状態となった。
|
次年度の研究費の使用計画 |
解析:DHEAS値の分布をグラフで視覚化し、以前発表したデータサンプルとの分布の相違を観察する。違いがあれば、時代背景からDHEAS値の変移を検討する。DHEASを目的変数とし、従属変数MMSEと単および多変量解析を行う。同様にDHEASと起床・就寝時間、睡眠時間とを単・多変量解析で調べることにより、DHEASを規定する因子を検討する。宇久町検診にてサンプル数を増やすことにより、解析を行う上でより関連性が深まることが予測される。田主丸町の農村地区と宇久町の漁村地区の2地区において生活習慣の相違とDHEASとの関連などを様々な統計手法により分析する。さらに、対象者に平成21年度から数年後の脳卒中の発症調査および認知機能検査(MMSE)を再度行うことにより、非発症者と発症者間にDHEAS値の差、認知機能程度の差、睡眠時間の差に統計学的に有意性があるか否かをt検定およびロジスティック回帰分析を行う。DHEAS値で群分けし、認知機能低下率を調べる。横断かつ縦断的に統計解析を行うことにより、より精度の高い研究とする。 発表・論文作成:得られた結果によりDHEASと認知機能の関連について学会発表を行う。それに伴わせて論文を作成し、疫学的に確かめられた有意義なエビデンスとして報告する。
|