研究課題/領域番号 |
23590906
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
鍋島 茂樹 福岡大学, 医学部, 准教授 (50304796)
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キーワード | 漢方 / インフルエンザ / 麻黄湯 |
研究概要 |
インフルエンザ治療において漢方薬「麻黄湯」は臨床的に有効であるが、その薬理学的機序はわかっていない。in vitroにおいて麻 黄湯が抗インフルエンザ・ウイルス活性を有するかどうかを検討し、あわせてその機序を解析することが、本研究の主目的である。 平成23年度は、in vitroにおいて麻黄湯がインフルエンザ・ウイルスの増殖を抑制するかどうかを証明することが大きな目標であ った。ヒト肺癌細胞株A549にインフルエンザウイルス(PR/8)を感染させ、24時間後に培養液中の感染性ウイルス量及び細胞内ウイル スRNAを測定すると、コントロールのlaninamivir、amantadineと同様、あるいはそれ以上に、容量依存的にウイルス量は著明に低下し た種々のサブタイプに対しても、また他の細胞株を用いた場合にも同様に認められた。平成24年度はその抗ウイルス作用の詳しいメカニズムを追究するため、麻黄湯を構成する4生薬のいずれが効果があるのか、またインフルエンザウイルス感染細胞のサイトカイン及び抗ウイルス分子産生能について検討した。麻黄湯は麻黄、桂皮、杏仁、甘草からなるが、それぞれで検討したところ、麻黄と桂皮のみ抗ウイルス作用を有することがわかった。A549細胞にPR8を感染させ、1時間後に細胞外のウイルスを洗浄、その後麻黄湯の存在下または非存在下で24時間培養した。次に細胞内のTNF、IFN-beta, IFN-lambda, Mx-AのmRNAをreal time PCRで測定した。これらの抗ウイルス分子は、麻黄湯非添加(コントロール)では強く誘導されるが、麻黄湯を添加することでその誘導が抑制されることがわかった。つまり、予想に反し、麻黄湯はI型インターフェロン系を介した感染制御を行っておらず、他のメカニズムが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画は、麻黄湯によりI型インターフェロン系とそれを介したMxAなどの抗ウイルス分子が誘導されるかということが大きな目的であった。平成24年度はほぼその計画通りに進んでいる。実験計画に無理が無く、大きな失敗もなく実験をすすめることができたため、おおむね順調に伸展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらなるメカニズムを追究する。H23年、24年の研究により麻黄湯がインフルエンザ・ウイルスの増殖を抑制することが確かめられた。1型インターフェロンは細胞内抗ウイルス分子群を誘導するサイトカインであるが、麻黄湯はそこに働いているのでは無いことがわかった。インフルエンザウイルスは、ウイルスに対する自然免疫で重要な役割を果たしているオートファジーの成熟(オートファゴゾームとライソゾームの融合のことをいう)を阻害することがわかっている。そこで麻黄湯がオートファジーに直接或いは間接的に作用し、抗ウイルス作用を発揮しているのではないかと言うことを仮定して研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の物品費に関しては、他教室のものを使用させてもらうことができたので、繰越金が発生した。次年度に関しては、前年度の繰 越金100万円余を用いてサーマルサイクラーが必要と考えている。その他、データ解析用のソフトやPCも購入が必要であ る。また消耗品としては、実験に使用する試薬が継続して購入する必要がある。旅費に関しては、学会・研究会への参加・発表を引き 続き行う予定である。実験を手伝っていただく実験助手に対しては謝金をはらう必要がある。
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