研究課題/領域番号 |
23590909
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩切 大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (10307853)
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キーワード | EBV / EBER / 胃がん / TLR3 / 自然免疫 |
研究概要 |
EBウイルス(EBV)が胃上皮細胞に感染すると、EBVのnon-coding RNAであるEBERによりIGF1の発現が誘導され、感染細胞の増殖が促進さ れる。本研究は、EBERによるIGF1の発現誘導機構の解明を通じ、EBVによる胃がんの発生のメカニズムを明らかにすることを目的とし 行っている。これまで我々は、EBERがウイルスRNA認識分子であるRIG-Iを活性化、I型インターフェロンやサイトカインの産生を誘導 することを明らかにした。その後の研究で、EBERと類似構造をもったアデノウイルスRNA(VA)もRIG-I活性化能を持つことを明らかにし た。 また我々は、EBERがEBウイルス感染細胞より細胞外に放出され、それがTLR3を介したシグナル伝達を惹起することを見出し、このEBER によるTLR3シグナルの活性化は伝染性単核症や慢性活動性EBV感染症、EBV関連血球貪食症候群の発症に寄与している可能性があることを明らかにした。 一方、EBERはEBV感染胃がん細胞からも放出され、それがTLR3シグナルの恒常的な活性化を誘導していること、そしてこのTLR3シグ ナルの活性化がEBERによるIGF-1産生誘導に関与しているということがわかった。さらにその後の解析で、EBERによるTLR3シグナルの 活性化がEBV感染胃がん細胞の増殖を促進していることが明らかとなり、TLR3シグナル活性化がEBV 陽性胃がんの発生に寄与している ことを示唆する結果が得られ、そのメカニズムに関する研究により、EBV感染胃がん細胞から放出されるエクソソームにEBERが含まれていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的のひとつである、EBV陽性胃がん細胞において、細胞から放出されたEBERによるTLR3シクナル活性化か起こっているかどうか、それがIGF1誘導に関与しているかどうかについて、現在までの研究で、EBV陽性胃がん細胞から培養上清中へのEBERの放出の有無の確認とその定量はなされ、また、EBERによるTLR3シグナル活性化がIFNやサイトカイン、IGF-1の産生を誘導することを明らかにしたのに続き、その後EBV陽性胃がん細胞のTLR3をノックダウンすることによりIGF1の産生が低下することがわかった。一方EBERの細胞外への放出機構に関しては、前年度までの研究で、EBERがその細胞内結合蛋白質に依存して胃がん細胞より放出されていることを示す結果が得られていたが、さらにその後の解析で、EBERがEBV感染胃がん細胞から分泌されるエクソソーム依存的に放出されていることを明らかにした。以上の状況から、本研究の目的の達成度は概ね計画通りであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
EEBERによるTLR3シグナル活性化をTLR3ノックダウンによって抑制するとEBV陽性胃がん細胞からのIGF1産生が抑制されるという知見をもとに、TLR3シグナルの抑制によりEBV陽性胃がん細胞の増殖が抑制されるかとどうかについての解析を行う。さらにEBERによるTLR3活性化によってなぜIGF1産生の誘導がおこるのかについて、そのメカニズムを解析し、EBV陽性胃がん細胞の増殖促進との関わりについて検証する。それらの結果をもとに、TLR 3シグナル活性化によるEBV陽性胃がん細胞の増殖機構の詳細を明らかにする。また、EBERの細胞外への放出機構に関して、エクソソーム依存的に放出されるという知見をもとに、EBER欠損EBV陽性胃がん細胞株も用いた、エクソソームによる細胞刺激実験を行い、TLR3シグナルの活性化の有無、あるいはIGF1産生誘導かおこるか否か、そしてそれらがEBERの存在に依存しているかどうか等について検証する。それらの検証により、エクソソームを介して分泌されるEBERの、EBV陽性胃がん細胞における役割を明らか にすることが出来ると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度購入が必要と思われた試薬が他のもので代用可能となったこと、および、遺伝子発現解析依頼の時期が代わり、25年度となったため、未使用額が発生。 研究費は25年度に遺伝子発現解析等に使用する予定である。
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