研究課題/領域番号 |
23590912
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
杉山 敏郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00196768)
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研究分担者 |
小泉 桂一 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10334715)
安藤 孝将 富山大学, 大学病院, 助教 (30600671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GIST / c-kit |
研究概要 |
消化管間質腫瘍(GIST)発症の分子機構の解明からKIT蛋白を介した脱制御が主たる腫瘍化機序と推定されている。しかし変異c-kit遺伝子ノックインマウスの報告(J Pathol 214,302,2008)ではGIST起源カハール介在細胞の過形成は多発するが、腫瘍は盲腸部に限局、発生頻度が最も高い胃には発生しない。この知見はc-kit遺伝子変異のみが増殖機序ではないこと、発生臓器特異性があることを予測させる。 現在までに、SV40 largeT抗原遺伝子導入動物を用いて、GISTが発生する消化管各臓器(食道、胃、小腸、盲腸、結腸、直腸)からサブクローニング後、その中からカハール介在細胞に特徴的なKIT陽性、CD34陽性細胞株のみを抗体ソーティング法により分離培養し、SV40 largeT抗原遺伝子導入細胞の特徴である温度感受性(33℃での培養ではSV40 largeT抗原が活性化し、不死化できるが、37℃では死滅する)胃由来カハール介在細胞株(臨床的に悪性度が低い)および小腸由来カハール介在細胞株(臨床的に悪性度が高い)を樹立した。 また、site-directed mutagenesisにより、HEK細胞に一過性にc-kit遺伝子エクソン11遺伝子変異を導入した培養細胞株、およびc-kit遺伝子エクソン11およびエクソン17遺伝子(kinase activation loop) 変異を導入した培養細胞株を樹立し、各々の薬剤感受性(イマチニブ、スニチニブおよびニロチニブ)の差異から、本遺伝子変異導入細胞が臨床検体と同様の薬剤感受性を示すことを確認した。 現在、以上の変異c-kit遺伝子を上記の悪性度の低い胃由来カハール介在細胞株および悪性度の高い小腸由来カハール介在細胞株に遺伝子導入中にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究概要に示したように、研究は、概ね計画通り、達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
1)臨床的に悪性度が低い胃GIST細胞株と悪性度が高い小腸GIST細胞株と細胞増殖、アポトーシスに関与する遺伝子を対応するDNAアレイを用いて、さらにエピジェネチックな変化をメチル化レベルを指標として比較、検討し、悪性度の決定に関与する付加的遺伝子を同定する。2)上記の1)の検討から明らかにされる変異c-kit遺伝子導入によって変動する細胞内情報伝達分子が同定された場合には、それら分子機能をsiRNA法により抑制し、試験管内での増殖能およびアポトーシス抵抗性に及ぼす効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)消化管各臓器カハール介在細胞由来GIST細胞株の増殖能およびアポトーシス抵抗性を細胞数、Ki67染色、MTTアッセイ、DNAラダー法、アポトーシスキット等により検討する。2)上記の1)の検討から明らかにされる変異c-kit遺伝子導入によって変動する細胞内情報伝達分子が同定された場合には、それら分子機能をsiRNA法により抑制し、試験管内での増殖能およびアポトーシス抵抗性に及ぼす効果を検討する。3)樹立した2種の細胞株のメチル化異常を検討し、その標的遺伝子を同定する。4)胃GIST細胞株および小腸GIST細胞株をSCIDマウス皮下に移植し、腫瘍形成を確認する。
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