研究課題/領域番号 |
23590913
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
古田 隆久 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (10303546)
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研究分担者 |
杉本 光繁 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80397398)
小川 法良 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (80308618)
竹内 和彦 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00419425)
松山 幸弘 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20312316)
難波 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60198405)
梅村 和夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40232912)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 低用量アスピリン / クロピドグレル / 胃粘膜傷害 / 遺伝子多型 |
研究概要 |
基礎的研究として、健常ボランティアにアスピリンに加えてクロピドグレルを内服した際の胃粘膜傷害を検討し、クロピドグレルの活性化代謝を担うCYP2C19遺伝子多型との関連を中心に検討した。アスピリン100mgとクロピドグレル75mg一週間内服後の胃粘膜傷害は個体間格差をみとめた。クロピドグレルの抗血小板作用はCYP2X19遺伝子多型に依存するため、粘膜傷害とCYP2C19遺伝子多型に関連があるかを検討したが、有意な相関は認めなかった。また、アスピリンによる抗血小板作用とも相関が認めなかった。予防方法としてPPIが用いられるが、PPIの効果はCYP2C19遺伝子多型に異存する。そして、アスピリンとクロピドグレル併用時のPPIの予防効果はCYP2C19遺伝子多型に依存した。以上の結果はClin Gastroneterol Hetaptolに掲載予定である。今後さらに、粘膜傷害の個体間格差に関わる遺伝子多型に関して検討を続ける予定である。 臨床的な検討に対しては、アスピリンやクロピドグレル内服中の患者より同意を得た後に採血をおこないDNAの抽出をしており、ゲノム解析に向けてのサンプルの蓄積を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的研究を一つ終えた時点で一定の成果をあげることができている。すなわち、臨床研究は症例の蓄積に時間がかかるため、同時にボランテイアでの検討をすすめ、そこでアスピリンやクロピドグレルによる粘膜傷害が形成させる様子を観察することができた。さらに24時間胃内pHモニタリングで胃酸分泌をモニターしたため、胃酸との関連も検討することができた。CYP2C19遺伝子多型はクロピドグレルの効果に影響するため、クロピドグレルによる粘膜傷害にCYP2C19多型は関与することが予測されたが、結果的には関連がないこととなった。ただし、胃酸分泌やH. pylori感染は有意な影響因子であることが判明し、さらに予防法で用いるPPIの効果がCYP2C19遺伝子多型に影響することが判明したため、予防にはPPIでかつその用量はCYP2C19多型で決定すべきと言う結論がえられ、予防方法の個別化療法にたいしての重要な結果を得ることができた。以上は、Clinican Gastroenterology and Hepatology誌に掲載予定となっている。臨床研究における症例の蓄積は時間がかかるため、臨床でのデータに関してはすこし時間が必要であると考えている。測定すべき遺伝子多型についてはすでに候補をあげているが、さらに最新の情報をもとに追加を検討している。最終的な結果はまだ出ていないが、それまでの過程として、基礎研究での一定の成果がでたこと、そして論文をひとつ完成させたこと、さらに臨床研究の症例も蓄積が始まっているという点で、進展はあるいみ順調であると評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的検討として、データの詳細な解析を予定している。すなわち、胃粘膜傷害も出血やびらん、潰瘍と多彩である、特に出血とびらんは別物であるので、クロピドグレルやアスピリンによる胃粘膜傷害がどういうものであるかを詳細に検討する予定である。 また、低用量アスピリンによる胃粘膜傷害の原因検索として、CYP2C9, CYP2C8, UGT1A6, COX1, COX2等の遺伝子多型の検査を予定している。さらにH2SやNO産生に関わる遺伝子多型の検査も予定している。患者の背景、抗血小板薬を内服するに至った基礎疾患、性別、年齢、H. pylori感染の有無等を詳細に調べて、遺伝子解析の際に多変量解析にて要因を分析していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、さらに研究をすすめるべく、有効に研究費を使用していく。まず、ボランティアをもちいた胃粘膜傷害の検討に際しては、薬剤費、試薬代、謝礼、雑費の支出を予定している。臨床研究に関しては、遺伝子解析の系の確立・実施にともなう試薬代をおもな支出の対象と考えている。候補遺伝子が数個に限定された場合には、当院での迅速の遺伝子多型解析機での解析が可能となるような系の構築も検討したいと考えており、そこにも研究費を使用できればと考えている。
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