研究課題/領域番号 |
23590915
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
豊永 高史 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (40464268)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / 早期診断 / 食道がん |
研究概要 |
病態における細胞においては、疾患に関連したタンパク質の発現、ならびに、その活性の変動により、疾患に特徴的な低分子量代謝産物変動パターンが形成されると考えている。近年、低分子量代謝産物解析(メタボロミクス)の技術が飛躍的に進歩し、医学領域への応用が期待されるようになってきた。そこで、本研究課題では、食道がんにおいて特徴的に変動する代謝産物を網羅的に解析し、その変動パターン解析を行うことで、将来的な食道がん早期診断法の開発を目的とした。平成23年度では、食道がんを含めた様々なヒトがん細胞株をヌードマウスに移植し、そのがん細胞株が定着後にヌードマウスの解剖を行い、マウスより血清を採取して、血清中代謝産物の解析を、質量分析計を用いて実施した。また、同様に、がん細胞を移植していないヌードマウスからも血清を採取した。その結果、アミノ酸を中心に様々な代謝産物ががん細胞の存在により変動することが明らかとなった。また、各種細胞株自体からも代謝産物を抽出し、同様に、代謝産物の解析を行った結果、由来組織が異なることで、細胞内代謝産物プロファイルが異なることを明らかにできた。現在、血清からのデータと細胞株からのデータとについて統合的な評価を行っており、各がん種特異的な代謝産物の変動を同定することを試みている。また、食道がん患者の血清収集も順次進めており、100例以上の検体が収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、主に、ヌードマウスを用いたがん細胞株定着実験を計画していたが、ヌードマウスの血清中代謝産物解析や、ヒト由来がん細胞株中の代謝産物解析はほとんど終了できた。現在、血清からのデータと細胞株からのデータとについて統合的な評価を行っているところであるが、この計画は、ほぼ予定通り進捗していると考えている。また、平成23年度には、食道がん患者の検体も収集を順次行っていくともに、その分析を開始する予定にしていた。ヒト検体の測定を行う際の、検体前処理条件や分析条件等については決定できたものの、食道がん患者検体の分析を開始するところまでには至らなかった。現在、収集できた検体について、順次、分析を進めている。これらの現状を総合的に評価した結果、平成23年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度には、主に、ヌードマウスを用いたがん細胞株定着実験を計画していたが、ヌードマウスの血清中代謝産物解析や、ヒト由来がん細胞株中の代謝産物解析はほとんど終了できた。現在、血清からのデータと細胞株からのデータとについて統合的な評価を行っているところであり、早急に本評価を終了させ、その結果を反映させた形でヒト検体の分析を進めていく。平成23年度に収集していた食道がん患者検体と健常人検体のメタボローム解析を進めていくとともに、確証実験等も実施することで、また、多変量解析など様々なデータ解析を行っていくことで、より感度、特異度の高いバイオマーカー候補を見出していく予定である。さらに、バイオマーカー候補が決定することができた場合には、なぜ、その代謝産物がバイオマーカーとなるのか、その発生メカニズムを、分子生物学的実験やヌードマウスなどを用いた動物実験により明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の繰り越し分については、ヌードマウスの血清データと細胞株データとについて統合的な評価を行う際に必要な各種消耗品の購入費用として使用する。また、平成24年度には、質量分析計で得られたデータを解析し、得られたデータを様々な統計処理を行う必要があるため、本研究で使用する統計解析用ソフトウェアを本研究費にて購入する予定である。また、実験全般で使用するプラスティック消耗品やガラス消耗品、質量分析用試薬、質量分析用カラムなどの消耗品の購入に研究費を使用する。平成24年には、本研究内容の一つとしてヌードマウスなどを使ったマウス実験を実施する計画をたてており、本研究費によってマウスを購入する予定である。本所属機関の動物実験施設にて動物(マウス)を飼育する場合には、動物実験施設使用料が必要となるため、本研究費において動物実験施設使用料を捻出する。また、ヒト検体を用いたメタボローム解析を実施した場合には、多量の分析データが出てくるため、その解析に従事する実験補助アルバイトを雇用する予定にしており、その人件費を本研究費にて捻出する。本研究により得られた成果は、学会での発表を予定していることから、学会参加旅費を本研究費から捻出するとともに、学術論文での公表が可能となった場合には、本研究費を用いて論文投稿費用を捻出する予定にしている。
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