研究課題/領域番号 |
23590918
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西川 潤 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00379950)
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研究分担者 |
小賀 厚徳 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90243633)
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キーワード | Epstein-Barr virus / 残胃癌 |
研究概要 |
1.EBV関連胃癌におけるAIDの発現について 抗AID抗体を用いて、ホルマリン固定パラフィン切片に対して、免疫染色を試みているが、非特異的反応しか認められていない。胃癌に浸潤しているリンパ球においてもAIDの発現が明瞭でないため、mRNAの発現についてRT-PCRでの解析を開始している。 2.EBV感染によるAIDの発現を増強について 手術標本に対する免疫染色によるAID発現の評価が困難であるため、1.の問題点の解決のために用意したPCR primerにより、細胞株におけるAID mRNAの発現で評価を行っている。 3.EBV関連胃癌において、AIDにより変異を受ける遺伝子の探索 EBV関連胃癌患者の末梢血リンパ球について、copy number variation(CNV)の解析を行っている。また、EBV関連胃癌細胞株SNU-719細胞を用いてCGH解析を行った。これらのデータを手がかりにEBV陽性胃癌患者における、変異遺伝子の解析を行う。本研究に関連して、EBV陽性胃癌について、DNAメチル化異常も検討を行った。EBV関連胃癌細胞株SNU-719細胞を用いた新規メチル化遺伝子の検討において、今まで胃癌において、DNAメチル化が証明されていなかった遺伝子などにおいてもEBV陽性胃癌においては、DNAメチル化が起こっていることを証明した。本検討については、すでに論文作成の上、投稿し、revisionの追加実験中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AID発現について、免疫染色によるタンパク発現を中心に検討を行う予定にしていた。発現している細胞の局在を知るためであるが、免疫染色用の良い抗体がなく、検討がやや遅れている。今後は、mRNAレベルの発現を検討するように方向転換する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)EBV関連胃癌におけるAIDの発現について AID発現をmRNAレベルでPCRかin situ hybridizationで検出していく。新規に免疫染色に応用可能な抗体が見つかれば、そちらでの検討を行いたい。残胃の癌は慢性炎症からの発癌が発生機序として考えられているため、AIDの発現が高い可能性が強く、他の消化器領域の炎症発癌と同様にAIDの関与が調べられればと考えている。 3)EBV関連胃癌において、AIDにより変異を受ける遺伝子の探索 EBV胃癌患者に対するCNVの検討を10例近く行っているので、これらに共通して認められる染色体部位を同定して、そこにコードされている遺伝子に異常がないか、を検討する。positive controlとして、EBV陽性胃癌細胞株SNU719を用い、これと一致する遺伝子異常が検討の候補となると考えており、検討を急ぐ。 前回、科研で取り組んだEBV陽性胃癌のDNAメチル化異常の検討と本検討との関連性を調べ、AIDによるmutationの修復に関わる遺伝子がDNAのメチル化で抑制していないか、などを検討に加えたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実験内容に基本的な変更はなかったが、免疫染色に適した抗体がなく、検討が進まなかったため、未使用額が発生した。次年度は、最終年度となるため、タンパク発現をみるための抗体を選定し、購入する。また、タンパク発現からmRNA発現の検討に変更が必要と考えられるため、PCRのprimerやprobe酵素などの購入に充てたい。 copy number variationの検討の症例数を増加し、追加症例についての検討を加える。また、できれば共通して異常の見られる染色体部位の同定、そこにコードされる遺伝子の発現などをmRNAやタンパクレベルで行う。これらの抗体や検出に必要な試薬などの購入を計画している。高額な機器については、購入の予定はないが、成果を学会発表し、論文作成のための英文校正などの費用に充てるつもりである。
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