研究課題/領域番号 |
23590921
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
溝下 勤 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40347414)
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研究分担者 |
谷田 諭史 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30528782)
城 卓志 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30231369)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 胃幹細胞 |
研究概要 |
我々は、研究目的である組織幹細胞および癌幹細胞の腸型化のメカニズムを解明するため、平成23年度は以下のような研究を行った。1.マウス胃固有腺管および大腸腺管の3次元培養系の確立:腸管(小腸)の3次元培養系については、すでに様々な報告がされているが、胃固有腺管の培養系についてはまだまだ課題が多い。我々は生後1~2日のマウス(C57BL/6J)から腺胃を取り出し1mm3未満の切片に分断してコラーゲンゲルで培養する3次元培養系を確立した。この培養腺管は、免疫染色で胃型マーカーのMUC5ACが陽性であり、病理学的にも腺腔構造を有しており腺腔の周りには繊維芽細胞を含めた間質組織も存在する。また、約1か月間の培養が可能である。加えて、我々は上記の方法でマウス大腸腺管についても、3次元培養系を確立した。今後は、この培養系を用いて研究計画調書記載の分子生物学的実験やスナネズミモデルへの応用などを進める予定である。2.スナネズミモデル:胃の腸型化を考える上でHelicobacter pylori感染スナネズミモデルは有用な実験系である。我々は、スナネズミモデルへの上記1.の応用を行う過程で、特に内分泌細胞系の動態に注目して研究を進めたところ以下の事実を確認した。 ・低用量のlansoprazole(プロトンポンプインヒビター、5mg/kg/day投与)では胃内分泌腫瘍および胃癌発生は促進されず、持続投与の安全性が確認されたこと。・しかし、高用量(25mg/kg/day投与)では胃内分泌腫瘍発生が促進されたので注意が必要であること。・Lansoprazoleで誘発されるcollagenous colitisの解析モデルとしてスナネズミは有用であること。 以上が平成23年度の研究実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画調書記載内容と照らし合わせた研究の進行度は、以下の如くである。1. Helicobacter pylori感染スナネズミ腺胃を用いた胃型腺管の3次元培養系の確立:胃固有腺管の培養系についてはまだまだ課題が多い現状がある中、我々はマウス胃固有腺管の3次元培養系を確立した。この培養腺管については、種々の胃型(MUC5AC、MUC6など)・腸型(MUC2、Villinなど)マーカーで検索を進めているが、現在、この培養系をスナネズミ腺胃に応用し胃型腺管の3次元培養系の確立を行っている。2. R-spondin 1(腸分化促進因子)刺激後の3次元培養腺管組織中のLGR5およびBmi1発現幹細胞の腸型形質発現の変化と増殖能解析:マウス・ヒト消化管(胃、小腸、大腸)の組織および前述のマウス胃・大腸腺管の3次元培養系を用いて、LGR5およびBmi1の免疫染色の条件設定を進めている。3.その他:ヒト胃癌(200例)での上記幹細胞マーカー発現を調べるための未染スライドなどを用意した。また、胃型(Sry-like high-mobility group box 2, Sox2)・腸型(caudal-related homeobox gene 2, Cdx2)特異的発現遺伝子アデノウイルスベクターを調整中である。加えて、前述のスナネズミモデルでの研究過程で英語論文を2報報告した(Asian Pac J Cancer Prev., 12:1049-54, 2011.; Asian Pac J Cancer Prev., 12: 2759-62, 2011.)。 以上より、区分は(2)と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、平成24年度の研究計画調書記載内容と照らし合わせて今後の研究の推進方策につき以下のことを考えている。1.胃型形質発現胃癌細胞株を用いたWnt シグナル関連因子強発現下での粘液形質の胃型から腸型への分化誘導と増殖に関与する因子の特定:前述したマウスの胃固有腺管の培養系を応用し、生後1~2日のスナネズミの腺胃で3次元培養系を行っているが、この培養系腺管をR-spondin 1(腸分化促進因子)およびHelicobacter pylori標準株で刺激し腸型化の有無を検索する。もし、腸型化が認められた場合は、Wnt シグナル関連分子(-catenin 、GSK-3、LEF/TCF、Prop1、 Musashi-1など)の発現状況を確認し、胃癌細胞株KATO III、MKN-28でのそれらの強発現系でのデータと照らし合わせて比較検討する。2.腸型形質発現細胞株を用いたWnt シグナル関連因子RNAiノックダウン下での腸型粘液形質の変化と増殖に関与する因子の特定:前述したマウス大腸3次元培養腺管に、Sox2発現アデノウイルスベクターを用いて胃型形質を強発現させ、腸型粘液形質の変化を確認する。また腸型粘液形質発現が発現している胃癌細胞株AGS、MKN-45のWnt シグナル関連分子をRNAiで欠失させ、腸型粘液形質の変化を確認する。最終的に上記の2つのデータを比較検討する。3.ヒト胃癌組織での胃幹細胞および癌幹細胞の同定と胃型・腸型形質発現との関連性の検討:研究計画調書記載の如く胃癌手術標本(200例)について幹細胞マーカーLGR5、Bmi1およびMusashi-1の免疫染色を行い胃幹細胞および癌幹細胞の同定を試みる。さらに、幹細胞マーカー陽性細胞(癌細胞および非癌細胞)での胃型・腸型形質発現を重染色で解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。まず、今後の推進方策で述べた1.胃型形質発現胃癌細胞株を用いたWnt シグナル関連因子強発現下での粘液形質の胃型から腸型への分化誘導と増殖に関与する因子の特定、2.腸型形質発現細胞株を用いたWnt シグナル関連因子RNAiノックダウン下での腸型粘液形質の変化と増殖に関与する因子の特定、3.ヒト胃癌組織での胃幹細胞および癌幹細胞の同定と胃型・腸型形質発現との関連性の検討の実験を遂行するため各種薬品(各種抗体、PCR関連試薬、ウェスタン解析関連試薬、等)、病理組織および細胞培養関連、動物(マウス、スナネズミ)およびプラスチック器具などを購入する予定である(平成24年度の物品費内訳は、1,160,000円)。各種抗体としては、LGR5(Abgent)、Bmi1(Cell Signaling Technology)、Musashi-1(Cell Signaling Technology)、MUC5AC(Novocastra Laboratories)、MUC6(Novocastra Laboratories)、MUC2(Novocastra Laboratories)、villin(Transduction Laboratories)、Sox2(Chemicon)、Cdx1(Abcam)、Cdx2(BioGenex)、Mib1(Abcam)を購入予定である。また、学会(日本消化器病学会、日本消化管学会など)での研究成果の発表や外国語論文の校閲および研究成果の英語雑誌への投稿なども行う予定である(平成24年度の旅費、人件費・謝金、その他の内訳はそれぞれ、140,000円、50,000円、50,000円である。)。
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