研究概要 |
本研究の目的はH.pylori感染者の萎縮性胃炎進展にCOX-2遺伝子多型、1L-1β遺伝子多型(SNP)がそれぞれ独立して関与し、両リスク要因を併せ持つ集団の萎縮性胃炎進展リスクを明瞭にし、除菌療法がぜひ必要な集団を明らかにすることである。研究計画は、まず(1)病理組織標本から萎縮性胃炎患者、非萎縮性胃炎患者を抽出し、1L-1β、COX-2遺伝子のSNP解析を行う、(2)臨床症例でpepsinogenI/II比が2.5以下の症例を萎縮群pepsinogenI/IIが3.0以上の症例を非萎縮群として検討する2つの試験から成る。病理切片の解析はシドニーシステムを用いて萎縮例と非萎縮例を分類作業中でありまだDNA抽出には至っていない。臨床例の検討ではH.pylori陽性患者333名を対象として内視鏡生検ブロックまたは血液よりDNAを抽出しIIL-1β-511 SNP (rs16944)(n=323),TNF-α-308 SNP (rs1800629)(n=323),COX-2 -1195 SNP (rs689466)(n=291),-1290 SNP(rs689465)(n=291)について解析中である。これまで得られたデータでは、COX-2 (rs689466)はT/T38.5%, C/T36.8%. C/C24.7%、 COX-2(rs689465)はA/A93.4%, A/G6.3%, G/G0.4%であった。COX-2(rs689466)AA型のPGI/II値は2.12で低値の傾向を示し、委縮性胃炎との関連性が示唆された。現在はランダムに症例のPGI/II値測定、各遺伝子の多型を分析しており、それぞれのSNPを有する症例の平均PGI/II値を計算しているが、PGI/II比で萎縮症例、非萎縮症例と分けて、各々の遺伝子SNPの萎縮進展に対するリスクを算出する予定である。
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