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2011 年度 実施状況報告書

NSAID潰瘍のなりやすさとは?:COX2 DNAメチル化へのピロリ菌感染の関与

研究課題

研究課題/領域番号 23590928
研究機関聖マリアンナ医科大学

研究代表者

安田 宏  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80262129)

研究分担者 伊東 文生  聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90223180)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードCOX-2 / DNAメチル化 / 胃潰瘍 / 胃癌
研究概要

シクロオキシゲナーゼ(以下COX)はプロスタグランジン産生の鍵酵素であり、胃粘膜防御機構や発癌への関与が指摘されている。COX-2は実験潰瘍において潰瘍治癒に重要である。COX-2のプロモーター領域にはCpG islandが存在しepigeneticな発現制御を受ける可能性がある。H.pylori (以下HP)感染は胃粘膜で様々な遺伝子のDNAメチル化を誘導することから、背景胃粘膜のCOX-2のDNAメチル化の程度が潰瘍発症や発癌に影響する可能性がある。COX-2発現がDNAメチル化により発現誘導が抑制されていると粘膜修復不全となり、潰瘍発症に至る可能性がある。23年度は各種病態における背景胃粘膜COX-2メチル化を検討した。【方法】COX-2メチル化は内視鏡下に生検鉗子で採取した胃前庭部粘膜組織よりDNAを抽出して、バイサルファイト・パイロシークエンス法で定量的に解析した。【結果】1. HP陽性例と陰性例での検討(胃癌、除菌例を除く;n= 81):陽性例では陰性例と比べて有意にCOX-2メチル化が亢進していた(8.3 vs 27.6%; p<0.0001)。2. 除菌の影響(n=14):除菌例ではHP陽性例と比べて有意にCOX2メチル化は低値であった(16.6 vs 27.6%; p<0.001)。3. 胃癌症例での検討(n=16):内視鏡治療が可能な胃癌症例ではHP陽性非胃癌例と比べてCOX-2メチル化は低値であった(17.4 vs 27.6%; p<0.001)。【結論】HP感染例ではCOX2はメチル化しているが、除菌例では低値であった。一方、胃癌症例ではメチル化は低値の傾向があり、胃粘膜萎縮の進展でCOX-2が脱メチル化し易発現となることが発癌に関与する可能性が示唆された。HP感染者のCOX-2メチル化の程度は潰瘍発症や発癌に関与する可能性があると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒト由来の検体のバイサルファイトパイロシークエンス法によるCOX-2メチル化解析は本学施設で施行可能であり、本年度の検討課題は順調に解析が可能であった。次年度のヒト胃癌細胞での解析も本学の実験施設で検討可能である。現在、最終年度に検討予定であるピロリ菌感染スナネズミにおいても、ヒトで認められたようなCOX-2メチル化がみられるかを検討中である。

今後の研究の推進方策

本年度の検討でヒト胃粘膜ではピロリ菌感染によりCOX-2がメチル化され、潰瘍や慢性胃炎症例では高度メチル化を認めた。一方、ピロリ菌除菌症例ではCOX-2メチル化は陽性例と比べて低値であった。今後の検討ではCOX-2メチル化がCOX-2のmRNAあるいはタンパク発現に影響するかをin vitroおよびin vivoで検討する。in vitro検討ではKato III細胞を用いる。最終年度ではピロリ菌感染の標準実験動物であるスナネズミを用いて酢酸による実験潰瘍系でCOX-2発現にピロリ菌感染がどのように影響するかを検討する予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度ではiCOX-2メチル化がCOX-2発現に影響するかin vitroで検討する。ヒト胃癌細胞であるKato III細胞ではCOX-2 DNAの高度のメチル化(>80%)を認める。real time PCR法で検討するとCOX-2mRNA発現は認めなかった。本細胞をCOX-2 DNAメチル化亢進状態のモデル細胞として用いる予定である。COX-2発現誘導剤としてPKC刺激剤であるα-phorbol 12,13-dibutyrate(以下PDBu)を用いる。1. Kato III細胞にPDBuを添加しtranslationalなCOX-2発現が誘導されるかを検討する。2. DNAメチル化の影響をみるためメチル化阻害剤である5-Aza-dCを添加し、脱メチル化によってPDBuによるCOX-2発現がどのように影響されるかを検討する。COX-2発現がメチル化による制御も受けているとすれば、脱メチル化によってCOX-2発現は増強すると予想される。3. 更にメチル化による遺伝子制御において関連が指摘されているヒストンの脱アセチル化について、脱アセチル化剤であるtrichostatin A (TSA)を添加し、PDBuによるCOX-2発現がどのように影響されるかを検討する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Safety and efficacy of clopidogrel before surgery.2011

    • 著者名/発表者名
      Yasuda H
    • 雑誌名

      Clinical Medicine Insights: Therapeutics

      巻: 3 ページ: 3103-3111

    • 査読あり
  • [学会発表] COX-2メチル化とHP感染2012

    • 著者名/発表者名
      安田宏、渡邊嘉行、伊東文生
    • 学会等名
      第8回日本消化管学会
    • 発表場所
      仙台(仙台国際センター)
    • 年月日
      2012. 2.10
  • [学会発表] COX2 hypermethylation in HP-positive GU patients.2011

    • 著者名/発表者名
      Yasuda H, Watanabe Y, Itoh F
    • 学会等名
      American Gastroenterological Association
    • 発表場所
      Chicago, USA
    • 年月日
      2011. 5.10
  • [図書] Cell Signaling & Molecular Targets in Cancer2011

    • 著者名/発表者名
      Yasuda H, Itoh F
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2013-07-10  

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