研究課題
[目的]シクロオキシゲナーゼ(以下COX)はPG産生の鍵酵素であり、胃粘膜防御機構や発癌への関与が指摘されている。COX2は実験潰瘍において潰瘍治癒に重要である。COX2のプロモーター領域にはCpG islandが存在しepigeneticな発現制御を受ける可能性がある。潰瘍発症においては恒常的に発現するCOX1は健常時の胃粘膜防御に、刺激によって誘導されるCOX2は潰瘍治癒に関連する。各種病態における背景胃粘膜COX2メチル化とその意義をヒトおよびスナネズミで検討を行う。[方法]①臨床例での検討:COX2のDNAメチル化は内視鏡下に生検鉗子で採取した胃前庭部粘膜組織よりDNAを抽出して、バイサルファイト・パイロシークエンス法で定量的に解析する。各種胃疾患粘膜COX2 DNAメチル化を検討した。②in vitro検討としてCOX-2DNAが高度メチル化したヒト胃癌細胞を用いて、脱メチル化剤の添加や、COX-2発現誘導剤であるPKC刺激剤の作用を検討した。③スナネズミが胃粘膜COX-2メチル化のモデル動物となり得るかを検討した。[結果]①臨床例での検討では、HP陽性例では陰性例と比べてCOX2のDNAメチル化が亢進していた。また除菌後例ではCOX2メチル化は、陽性例と比べて低値であった。COX2は粘膜再生に重要な因子であることから、HP感染と潰瘍のなりやすさに関連する可能性がある。②KATOIII細胞で検討すると、脱メチル化剤5-aza-dCで同細胞はCOX2mRNA発現が回復した。COX2mRNA発現はメチル化によっても制御されていた。③スナネズミCOX-2DNAのプロモーター領域は未知なためDNA walking法でスナネズミCOX-2ゲノムのプロモーター領域をクローニングした。すると興味深いことに、ヒトよりも更に豊富なCpG islandが認められた。
2: おおむね順調に進展している
臨床例およびin vitroでの検討はほぼ終了した。DNA walking法によるスナネズミCOX-2ゲノムのプロモーター領域をクローニングにより、ヒトより豊富なCpG islandsを認められ、スナネズミはCOX2メチル化とCOX2mRNA発現の影響の検討に優れた系である可能性があることが示された。酢酸潰瘍の条件設定もほぼ終了しており、順調に研究は進行している。
これまでの検討で、スナネズミ胃はHP感染モデルとなるだけでなく、COX2メチル化についても有用な実験動物となる可能性があることが示された。最終年度において、① HP感染によってCOX-2 DNAメチル化がスナネズミ腺胃で起こるのか、また経時的に変化するかを検討する。② 腺胃に酢酸による実験潰瘍を作成し、その経時的なCOX-2mRNAおよび蛋白発現を検討し、HP感染の有無で治癒が影響されるかを比較する。
1,100,000円
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World Journal of Gastroenterology
巻: 18 ページ: 4308-4316
10.3748/wjg.v18.i32.4308.