研究課題/領域番号 |
23590929
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福井 広一 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60378742)
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研究分担者 |
三輪 洋人 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80190833)
渡 二郎 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10311531)
大島 忠之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00381814)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 再生医学 / 臨床 / 感染 / 癌 |
研究概要 |
我々はこれまで,Regenerating gene (以下 Reg) 蛋白が消化管粘膜の再生に関与すること,さらには,消化管炎症性疾患の病態形成に重要な役割を果すことを明らかにしてきたが,その分子機能の詳細は明らかでない.最近,従来の Th1 Th2 に分類されない Th17 細胞の存在が確認され,その実効サイトカインである IL-22 が消化管粘膜において Reg 蛋白を介して抗炎症作用や粘膜保護作用をもたらす可能性が示唆された. そこで本年度は,IL-22 による Reg 発現機序を検討した.IL-22 受容体は正常の消化管粘膜上皮細胞のみならず,胃・大腸癌細胞株にも発現していた.胃・大腸癌細胞株を IL-22 で刺激したところ,STAT3, ERK Akt のリン酸化が促進し,Reg 発現が誘導された.さらに,siRNA システムや各種シグナル阻害剤を用いた検討では,IL-22 刺激による Reg 発現には STAT3 シグナルが重要であることが示された.これらのことから,消化管粘膜において実際 Reg 蛋白が IL-22 の機能分子としてその抗炎症作用や粘膜保護作用を担う機序が示された.他方で,大腸癌細胞を IL-22 で刺激して強発現する遺伝子をマイクロアレイ解析したところ,興味深いことに,Reg, DMBT1, LCN2 といった抗菌ペプチド候補分子が共通して同定された.この結果から,Reg 蛋白の抗炎症作用や粘膜保護作用がその抗菌作用によってもたらされている可能性も考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Reg 蛋白が消化管粘膜で抗炎症作用や抗菌作用を示す可能性を傍証は得られた.さらに本年度は,その作用を直接証明するための in vivo 実験や in vitro 実験の準備を同時に進めていた点で,本研究は概ね当初の計画通り進展している.
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今後の研究の推進方策 |
H. pylori 感染胃炎における Reg 蛋白の粘膜保護作用を明らかにするため,in vitro 実験で Reg 蛋白の H. pylori に対する増殖抑制作用を検討する.さらには H. pylori 感染マウスを作成し,in vivo で H. pylori 感染胃炎における Reg 蛋白の抗炎症作用と抗菌作用を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は計画した実験の条件設定や準備が中心であったが,次年度からは研究の中心をなす遺伝子改変マウスを用いたReg 蛋白の抗菌作用および抗炎症作用の検討に取り掛かる.遺伝子改変マウスの飼育・維持およびそれらを用いた実験には多くの研究費が必要となることが予想され,当該研究費がそれらに使用される予定である.
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