研究課題/領域番号 |
23590929
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
福井 広一 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60378742)
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研究分担者 |
三輪 洋人 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80190833)
渡 二郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10311531)
大島 忠之 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00381814)
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キーワード | 遺伝子 / 再生医学 / 臨床 / 感染 / 癌 |
研究概要 |
Regenerating gene (以下 Reg) 遺伝子は炎症で傷害された消化管粘膜において発現が誘導され,その細胞増殖作用や抗アポトーシス作用が傷害された消化管粘膜の再生の役割を果すことが明らかになってきた.実際,消化管の炎症病態では様々なサイトカインの下流でReg 遺伝子が機能しているが,Reg 蛋白は特に転写因子 STAT3 のリン酸化を促進するIL-6 や IL-22 などのサイトカインの実効分子として重要な役割を果すことが明らかになった.興味深いことに我々の検討では,IL-22 が抗菌ペプチドの誘導に関与する中心的な分子であることが示された.そこで本年度は,IL-22 の実効分子である Reg 蛋白が胃癌発症の危険因子である Helicobacter pylori (H. pylori) にたいして抗菌作用を示すかを検討した.H. pylori にリコンビナント Reg 蛋白を投与したところ,H. pylori と Reg 蛋白が結合することが免疫沈降法で確認された.最近,Reg family 蛋白が腸管のグラム陽性菌の一部に対して増殖抑制効果を示す事が報告されており,我々も Reg 蛋白が H. pylori の増殖を抑制するか検討中である. Reg 蛋白の細胞増殖作用や抗アポトーシス作用は,その制御機構が破綻した場合には粘膜保護作用から一転して癌化に関与する可能性が示唆されている.事実,約50% の進行胃癌で Reg 発現が認められるが,本研究において Reg 発現のマーカーとしての臨床病理学的意義を検討したところ,抗癌剤耐性マーカーとなる可能性を見出した.この結果は過剰発現した Reg 蛋白の抗アポトーシス作用によるものかも知れないが,本研究の過程で得た臨床応用の可能性を示唆する知見である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,Reg 蛋白の抗菌作用の一端として H. pylori に対する結合性を in vitro実験で明らかにし,一方で,その異常発現が癌細胞の抗アポトーシス作用増強に関与していること報告できた点で,本研究は概ね当初の計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまで準備してきた Reg 遺伝子改変マウスを用い,非ステロイド性抗炎症剤起因性消化管粘膜傷害を作成して,Reg 蛋白の消化管粘膜保護作用を検討する.これまでは主に消化管上皮細胞に対する Reg 蛋白の作用を解析してきたが,消化管組織の間質細胞にも注目して検討したいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年の研究に必要な機器は所属機関に備わっており,新たに機器に研究費を用いる計画はない.研究費は主に培養細胞を用いた in vitro 実験やマウスを用いた in vivo 実験の消耗品に使用される予定である.
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