研究課題
我々はこれまで,Regenerating gene (以下 Reg) 蛋白の細胞増殖作用と抗アポトーシス作用が消化管粘膜の再生過程において重要な役割を果たすことを明らかにした.他方で最近,Reg 蛋白に抗菌ペプチドとしての機能もあることが報告され始めたことから,本研究では,抗菌ペプチドの誘導に重要な IL-22 と Reg 蛋白の関連について検討した.その結果,IL-22 は 転写因子 STAT3 のリン酸化を促進し,Reg 蛋白の発現を誘導することを明らかにした.さらには,IL-22 が Reg 蛋白のみならず同じく抗菌作用を示すと考えられる DMBT1 や LCN2 の発現も誘導することを示した.上記の Reg 蛋白の生理作用はいずれも消化管の粘膜保護には有用なものであるが,その制御機構が破綻した癌組織ではどのように病態形成に関与するかを検討した.その結果,Reg 蛋白が過剰発現した進行胃癌では,Reg 蛋白の抗アポトーシス作用により抗癌剤耐性を示す傾向が認められた.本年度は,薬剤起因性消化管粘膜傷害における Reg 蛋白ファミリーの作用を検討し,胃,小腸,大腸においてそれぞれ異なる Reg ファミリー蛋白が粘膜保護に関与していることを見出した.ところで,消化管粘膜の保護には上皮細胞のみならず間質細胞が重要な役割を果たしている.そこで我々は,間質細胞の中で血管内皮細胞に注目し,Reg 蛋白が及ぼす効果について検討した.その結果,血管内皮細胞に Reg 受容体が発現していること,Reg 蛋白刺激により細胞増殖作用と抗アポトーシス作用が促進すること確認した.加えて,我々は,それらの作用が Akt 経路の活性化に依存することを明らかにし, Reg 蛋白の血管新生・保護作用も傷害を受けた粘膜の再生において役割を果たす可能性を示した.
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Diagn Pathol
巻: 8 ページ: 187
10.1186/1746-1596-8-187