研究概要 |
貧血あるいは出血を伴いカプセル内視鏡で小腸粘膜傷害を来した低用量アスピリン(LDA)内服17例と出血リスク因子および性別・年齢をマッチさせたLDA内服対照群18例の血液よりDNAを抽出した。薬物代謝・トランスポーター遺伝子解析用マイクロアレイ(DMET plus )を使用し、網羅的SNP解析を行った。小腸出血との有意な関連性が得られたSNPsについてPCR-RFLP法あるいはTaqMan SNP Genotyping Assayキットを用い、ダイレクトシークエンス法で確認し、2群間で比較検討した。対象は、LDA内服小腸出血群30例と対照群430例。アレイ解析で、特定した27 SNPsの内、臨床的に関連性が疑われるSNPs についてvalidation を行った。CYP4F11 20043GGの率は、小腸出血群で対照群と比較して有意に高率であった(73.3% vs 43.6% p=0.002)。他の検討したSNPsには有意な関連性を認めなかった。多変量解析の結果、脳血管障害の基礎疾患,NSAIDs とともにCYP4F11 20043GG(3.35, 95% C.I. 1.41-7.80)はLDA小腸出血の危険因子であった。CYP4F11 SNPはLDAによる小腸出血予測のマーカーとなる可能性が示唆された。 さらにGSTP1*B 313G塩基保有者は小腸出血群で有意に高率であった(43.7% vs 23.9%、p=0.018, OR2.53, 95%C.I. 1.21-5.28)。また上部消化管出血の検討ではABCG2_c.421A基保有者は上部消化管出血群で有意に高率であった(48.5% vs 65.2%、p=0.03, OR 2.02, 95% C.I. 1.07-3.82)。
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