研究課題
H23年度は以下の項目について検討した。1.腸内細菌由来の生理活性物質を同定とその認識機構に関係する細胞表面分子の解明1)菌由来活性物質の同定:新規麦芽乳酸菌の培養上清から腸管上皮バリア機能を増強する活性物質であるポリリン酸を同定することに成功した。2)菌由来物質の生理活性を仲介する細胞表面分子の同定:ポリリン酸の生理作用を仲介する分子は腸管上皮細胞膜のインテグリンであることを明らかにした。2.新規の細菌認識機構による細胞内環境の変化とそのメカニズムの解明.1)菌由来活性物質による上皮細胞内分子およびmicroRNAプロファイルの変化:ポリリン酸投与により腸管上皮のmicroRNAプロファイルが変化することを明らかにした。2)菌由来活性物質による上皮細胞内の変化を仲介する細胞表面分子の解明:インテグリンの発現抑制モデルにおいて、ポリリン酸の作用が著しく低下することにより、ポリリン酸の作用はインテグリンによって仲介されることを証明した。3)菌由来活性物質の細胞内吸収メカニズムの解明:ポリリン酸が腸管上皮細胞に取り込まれることが明らかになり、そのメカニズムとしてエンドサイトーシスの関与が示唆された。4) 菌由来活性物質の細胞表面付着メカニズムの解明:in vitroの検討から、ポリリン酸はインテグリンへの結合能を有することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
H23年度は以下の検討を達成目標とした。1.腸内細菌由来の生理活性物質を同定とその認識機構に関係する細胞表面分子の解明2.新規の細菌認識機構による細胞内環境の変化とそのメカニズムの解明.1.については、新規麦芽乳酸菌の培養上清から腸管上皮バリア機能を増強する活性物質であるポリリン酸を同定することに成功し、このポリリン酸の生理作用を仲介する分子が腸管上皮細胞膜のインテグリンであることを明らかにした。2.については、ポリリン酸投与により腸管上皮のmicroRNAプロファイルが変化すること、ポリリン酸はインテグリンと結合する能力を持ち、インテグリンの発現抑制モデルにおいてその作用が著しく低下すること、ポリリン酸がエンドサイトーシスの機序により腸管上皮細胞に取り込まれることを明らかにした。以上のように当初の目標を達成していることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
1.新規の細菌認識機構による細胞内環境の変化とそのメカニズムの解明.1)菌由来活性物質による上皮細胞内分子およびmicroRNAプロファイルの変化:同定した菌由来活性物質をCaco2/bbe細胞に添加し,細胞内に誘導される分子や分泌される各種液性因子およびmicroRNAプロファイルの変化ついて解析する.2)菌由来活性物質による上皮細胞内の変化を仲介する細胞表面分子の解明:各種細胞表面分子の発現抑制モデルを用い,それぞれの生理作用がどの認識機構により仲介されるかを明らかにする.3)菌由来活性物質の細胞内吸収メカニズムの解明:菌由来活性物質を標識し,Caco2/bbe細胞内への輸送の有無を共焦点顕微鏡を用いて検討する.各種細胞表面分子の発現抑制モデルを用い,それぞれの菌由来活性物質の認識機構に関連する細胞表面分子を決定する.4) 菌由来活性物質の細胞表面付着メカニズムの解明:FITC標識した菌由来活性物質をCaco2/bbe細胞に添加し,細胞表面への付着の有無について検討する.2.腸管炎症における新規の細菌認識機構の発現および病態との関連性の解明.1)各種腸炎モデルにおける細菌認識機構の発現:薬剤誘発腸炎モデルや遺伝子改変腸炎モデルを用いて細菌認識機構関連蛋白の発現を検討する.菌由来活性物質を投与し,腸炎の肉眼的,組織学的変化を検討する.また,各細胞表面分子の発現抑制モデルを用いて,各種菌由来活性物質の腸管保護効果を検討する.2)ヒト炎症性腸疾患における細菌認識機構の発現:ヒト炎症腸管から内視鏡下生検により腸管粘膜を採取し,1.で明らかにした菌由来活性物質の認識機構に関連する細胞表面分子発現を検討する.
1.新規の細菌認識機構による細胞内環境の変化とそのメカニズムの解明.このの解析では、腸管上皮細胞株およびマウス腸管における細胞表面分子、細胞内シグナル関連分子などのmRNAおよび蛋白発現の解析、上皮バリア機能の解析などが必要となる。また、標識ポリリン酸を用いた細胞内動態の解析も必要である。2.腸管炎症における新規の細菌認識機構の発現および病態との関連性の解明.1)各種腸炎モデルにおける細菌認識機構の発現、2)ヒト炎症性腸疾患における細菌認識機構の発現、については各種腸炎モデルにおける腸管障害の肉眼的・組織学的評価、各種炎症関連分子やサイトカインの発現解析などが必要となる。以上の研究計画に使用する消耗品として約1,900,000円が必要である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件) 学会発表 (5件)
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