研究課題/領域番号 |
23590932
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木内 喜孝 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (20250780)
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研究分担者 |
角田 洋一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50509205)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / NKX2.3 / クローン病 / 潰瘍性大腸炎 / 感受性遺伝子 |
研究概要 |
炎症性腸疾患は原因不明の慢性腸炎で、日本でも患者が激増しており、病因解明が待たれている。また炎症性腸疾患は、疫学調査より発症に遺伝的要因が強く関与する多因子疾患とされ、遺伝因子を特定するため、genome wide association study(GWAS)が行われ、現在ゲノムの約30ケ所以上に有意に炎症性腸疾患と相関する領域が同定されている。その中でもNKX2.3遺伝子領域のTag SNP(rs10883365)は、人種を超えて炎症性腸疾患との相関が確認されたため、NKX2.3が有力な炎症性腸疾患の感受性遺伝子候補と考えられている。一方、GWASは統計学的に感受性遺伝子の存在する広範な領域を示すだけであり、その領域内で感受性遺伝子を確定するためには、領域内に存在する遺伝子がどのようにして炎症性腸疾患の感受性を亢進させるかというdisease pathwayを明らかにしなければならない。NKX2.3リスク対立遺伝子は血管内皮において高発現している特徴をもっていることが本申請者らの研究で明らかにされている。そこで転写因子NKX2.3が血管内皮でどのようにして疾患感受性を高めるか(disease pathway)を解析するために、血管内皮細胞における転写因子NKX2.3のターゲット遺伝子群を同定し、NKX2.3が疾患感受性に影響を与えるdisease pathwayを解明することを目的とする。また同時に、機能的にもNKX2.3が炎症性腸疾患感受性遺伝子であることを確定する。本年度は、NKX2.3発現ベクター作成を行い、HUVECを不死化したHUVEC CRL-1730を用いて、遺伝子導入の条件を検討した。遺伝子導入後の12時間後、24時間後の発現を解析した。 解析には発現解析用マイクロアレイを使用した。現在、発現情報を解析している途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NKX2.3発現ベクター作成を行った。ヒトNKX2.3cDNAを哺乳類発現ベクターに挿入し,ヒト NKX2.3発現ベクターを作成した。作成方法はInvitrogen社のGateway システムを用いた。エントリークローンとしてヒトNKX2.3 cDNAクローン(cone ID: IOH10855 , Invitrogen)を,デスティネーションベクターとしてpcDNA3.1 /nV5-DEST vector(Invitrogen)を用いて,作成した。サブクローニング後,GeneEluteエンドトキシンフリープラスミドミディプレップキット(Sigma-Aldrich)にて精製した。また、HUVECを不死化したHUVEC CRL-1730を用いて、遺伝子導入の条件を検討した。導入効率はpcDNA3.1/nV5-DEST vectorにLacZ遺伝子を挿入したものを用いて確認した。またMockとして、遺伝子挿入なしのpcDNA3.1を使用した。遺伝子導入後の12時間後、24時間後の 発現を解析した。 発現解析用マイクロアレイを行った。μMACS™ mRNA Isolation Kits を用いてmRNAを抽出精製後、Cyanine5、Cyanine3で標識RNAを作成し、AgilentのWhole Human Genome アレイを用いてtwo color解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP (chromatin immunoprecipitation)on Chipにてプロモター領域にNKX2.3が結合する遺伝子を同定する。ChIP (chromatin immunoprecipitation)のクロスリンク、細胞溶解、クロマチンの断片化、抗体による免疫沈降、DNA精製の各ステップは、クロマチン免疫沈降キット(NIPPON GENE)を用いて行い、詳細な条件はマニュアルに準拠する。 プロモーターアレイを用いた解析。使用するアレイは、Human Promoter array 488k ChIP-on-chip(Agilent)を予定している。基本手技は、発現解析用アレイと同様に、詳細はマニュアルに準拠して行う。 プロモーターアッセイを用いた解析。MAdCAM-1遺伝子5’領域(+10bp~-19091bp、reference sequence ENST00000215637)をPCRにて増幅しpGL4.11[luc2P] firefly luciferase vector (Promega)に挿入し、プロモーターアッセイ用のプラスミドとする。HUVECを不死化した HUVEC CRL-1730に、ヒト NKX2.3発現ベクターとともにコトランスフェクションし、NKX2.3によりMAdCAM-1プロモーター活性が制御されるか確認する。約500bp毎にdeleteしたプロモーターアッセイ用のプラスミドを作成し、どの領域にNKX2.3の結合シス配列部位が存在するか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ChIPのための試薬、免疫沈降キット。プロモーターアレイを用いたChIP-on-chipのための、アレイ、その他アレイ関連試薬。プロモーターアッセイ用のプラスミド作成のための、試薬、合成核酸、培養試薬、化学発光試薬。EMSAにて、絞られた結合配列にNKX2.3が結合するか、確認する。
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