研究課題/領域番号 |
23590933
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平田 喜裕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10529192)
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研究分担者 |
大塚 基之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90518945)
山田 篤生 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80534932)
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キーワード | シグナル伝達 / 微生物 / 免疫学 |
研究概要 |
H23年度は、上皮細胞特異的炎症性シグナルノックアウトマウスの検討を行い、上皮細胞特異的IKKbetaのノックアウトマウスFoxa-IKKマウスの腸管内病原体Citrobacter rodentiumに対する反応を検討した。 H24年度は樹状細胞による腸管内病原体認識機構を検討するために引き続き実験を行った。まず、樹状細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを作出した。マウス樹状細胞の細胞表面マーカーであるCD11cのプロモーター下にcreリコンビナーゼを発現させるマウスItgcre/+マウスをTGFbeta受容体のコンディショナルノックアウトマウス(TGFbR2F/F)と交配し、Itgcre/+;TGFbR2F/+マウス、Itgcre/+;TGFbR2F/Fマウスを作出した。Itgcre/+; TGFbR2F/Fマウスは前胃、胃、大腸など広範な消化管の持続性炎症により5-12wで死亡した。そのため腸管内病原体に対する影響はItgcre/+;TGFbR2F/+マウスを用いてそのコントロールのTGFbR2F/+もしくはItgcre/+;TGFbR2F/Fマウスと比較検討した。Itgcre/+;TGFbR2F/+マウスは、コントロールマウスと同様の体重増加を示し、24wまでの観察では、明らかな消化管の異常を認めなかった。一方3%DSSの腸炎モデルで検討するとコントロールマウスに比して、著明な体重減少と生存率の悪化が認められた。大腸粘膜では、炎症細胞浸潤の増悪、潰瘍の悪化、大腸組織の短縮がみられ、腸炎が悪化していることが示された。現在この大腸炎の悪化が腸内細菌に対する反応性の悪化である可能性を明らかにするため、Itgcre/+;TGFbR2F/+マウスにCitrobacter rodentiumを感染させ検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の研究で上皮細胞特異的な遺伝子改変マウスを作出し、上皮細胞IKKbが腸管感染症に与える影響を検討した。Citrobacter感染性腸炎においては、上皮細胞IKKbシグナルが腸管免疫に与える影響は軽微であり、上皮細胞の恒常性制御への寄与も限定的であると考えられ、免疫担当細胞におけるIKKbシグナルの重要性が示唆された。 そこでH24年度は腸管免疫と恒常性制御において免疫担当細胞の一つである樹状細胞の役割の解析に着手した。まず、Itgcre/+マウスを用いて、樹状細胞特異的な遺伝子改変マウスを作出した。現在までの検討で、樹状細胞特異的なTGFbR2のノックアウトマウスは前胃、胃、小腸、大腸などに樹状細胞、好中球、リンパ球などの浸潤が増加していることが明らかになり、樹状細胞のTGFbシグナルは、消化管の恒常性維持、とくに抗炎症反応に重要であることがわかった。さらにこれらの変化における腸内細菌叢の関与について検討を行っており、樹状細胞特異的なシグナルが腸管の恒常性維持に重要であること、また樹状細胞と腸管内細菌叢が相互に制御しあっていることなどが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
樹状細胞が宿主恒常性に与える影響について、Citrobacter感染モデルを用いて獲得免疫の関与について検討する。また消化管恒常性維持と腸管免疫における樹状細胞の役割について、細菌の吞食能や殺菌能についてTGFbシグナルが関与しているか骨髄由来樹状細胞を培養して検討する。また樹状細胞が分泌するサイトカインが腸内細菌叢の認識や腸内細菌叢の構成に影響を与えているのか、サイトカインの定量や細菌叢の定量を行い、樹状細胞による腸管免疫と恒常性維持の機序を明らかにする。 また近年腸内細菌叢が肥満に関与していることも臨床的に報告されてきており、我々の動物モデルにおいても、腸内細菌叢の変化が体重増加に影響するか、逆に脂肪食による肥満が腸内細菌叢および腸管免疫など宿主恒常性に影響するかなどを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
下記物品の購入費として使用する。 免疫染色やフロイーサイトメトリー用の抗体やサイトカインの定量のELISA、PCR用の酵素などの分子生物試薬の購入 マウスの購入、マウス飼育、維持に必要な飼料などの購入
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