研究課題/領域番号 |
23590934
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤井 俊光 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (30547451)
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研究分担者 |
永石 宇司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (60447464)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10175127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 慢性腸炎 / S1P受容体 / リンパ球動態制御 / FTY720 |
研究概要 |
難治性の炎症性腸疾患(IBD)に対する既存の治療法ではそれに対する抵抗性ないし離脱困難、さらに重篤な副作用などの問題を抱え、新規治療システムの確立が重要な課題となっている。本研究では我々が見いだしたIBDにおける特異的な免疫学的異常に着目し、リンパ球動態制御に必須の分子S1P受容体を標的とした、これまでと全く異なる概念に基づいた新規治療法に関して独自に検討を行っており、最終的にIBDに対する新規治療法の開発基盤樹立を目的としている。IBDにおける特異的な免疫学的異常、特に病原性T細胞のS1P/S1P受容体システムに関した知見をリンパ球動態制御による治療に応用するために、平成23年度において研究実施計画に沿って1、マウス正常T細胞/病原性メモリーT細胞のS1P/S1P受容体システム依存するFTY720の影響の検討および2、マウス慢性大腸炎モデルに対するFTY720療法の確立を行った。その結果、既報にあるナイーブT細胞のみならず病原性メモリーT細胞にもS1P受容体が発現していることがわかった。in vitroにおいてFTY720は単離したこれらの細胞に対しアポトーシスを誘導せず、各種細胞表面抗原の発現、ホーミング受容体の発現に影響をしなかった。次に、ナイーブT細胞移入腸炎モデルに対しFTY720を投与した結果、移入後8週の臨床スコア、組織学的スコアともに著明に改善することがわかった。また、末梢血および大腸粘膜CD4+T細胞数は著明に減少していた。各臓器CD4+T細胞の細胞表面抗原、ホーミング受容体発現はFTY720投与による影響は見られなかった。サイトカイン産生能についてFTY720投与群ではTh1およびTh2ともにサイトカイン産生を抑制した。以上より、炎症性腸疾患の慢性大腸炎モデルであるナイーブT細胞移入腸炎モデルに対しFTY720は腸炎を著明に抑制することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定研究計画に沿って実験計画を進行し良好な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在メモリーT細胞移入腸炎モデルに対してもFTY720が腸炎を抑制するかを検討している。同モデルにおいて腸炎を抑制するのであれば、既存のFTY720は二次リンパ節にリンパ球を隔離し免疫抑制作用を発揮するという機序では説明がつかないため、二次リンパ節が欠損したマウスにおける腸炎モデルを作成し、同モデルに対しさらにFTY720の腸炎抑制作用を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
メモリーT細胞移入腸炎モデルに対するFTY720の腸炎抑制効果の検討をしている。有効であれば、FTY720の新規の効果発現機序の解明のために、二次リンパ組織欠損腸炎モデルでのFTY720の有効性および骨髄病原性T細胞への影響の検討するため、二次リンパ組織の欠損したマウスモデルを作成し、病原性メモリーT細胞を移入し腸炎モデルを作成する。同モデルに対してもFTY720投与後の腸炎の抑制効果、リンパ球数の変化、細胞表面抗原の発現の差異などを解析し、骨髄由来の病原性T細胞に対するFTY720の有効性を検討する。
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