研究概要 |
本研究は消化器癌のゲノム異常及びエピゲノム異常を解析することにより、化学療法における特定の薬物に対する感受性・抵抗性を予測することを目的とする。 研究計画書を作成し倫理委員会に承認を得た後、2004年11月以降、京都大学医学部附属病院で化学療法を受けた進行再発胃癌135例、進行再発大腸癌408例を外来化学療法部データベースより抽出し、治療歴から候補症例を選定した。 また、染色体解析のためのSNP array及び反応キットを購入し(Mapping 500K Nsp, アフィメトリックスジャパン)、新たに解析システムを構築した。当初計画していたホルマリン固定パラフィン包埋切片から抽出したDNAを用いたSNP array解析ではprimer dimerによると思われるノイズが著しく、DNAコピー数解析の判定が不能であった。 このため凍結保存検体を用いてFOLFOX療法が行われた7例の大腸癌症例を対象としてSNP array解析を行った。22か月以上生存した5例においてはこれまでに高頻度に報告されている染色体異常が検出された。(以下染色体短腕をp、長碗をq、欠失を-, 重複を+で表す)+20q (5/5), +13q (5/5), -17p (5/5), +7 (4/5), -5q (4/5), -8p (4/5), -18q (4/5), -1p (3/5), +8q (3/5). 一方、肝切除後早期に再発し脳転移を合併してFOLFOX治療開始後17.9か月で死亡した1例において8p12, 8p11.21, 14q21.2-q21.3, 14q31.2-q31.3, 17q21.2-q21.31の5か所の遺伝子増幅を認め、異常染色体パターンが化学療法後の転帰に関与している可能性が示唆された。
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