研究概要 |
背景:転移性大腸癌に対する全身化学療法としてFOLFOX(5-FU, ロイコボリン、オキサリプラチン)療法が広く用いられているが、その効果予測因子は明らかでない。一方で特定の染色体領域の欠失や重複は大腸癌を含む多くの固形がんで認められている。本研究はこれら染色体異常がFOLFOX療法後の効果予測因子となるか否かを検討することを目的とする。 方法:原発巣を切除され、残る転移巣に対しFOLFOX療法を施行した大腸癌18例について、インフォームドコンセントを得て採取保存した腫瘍部及び非腫瘍部の凍結組織からDNAを抽出し、Affymetrix社製のSingle Nucleotide Polymorphism(SNP)アレイMapping 250Kを用いて22の常染色体及びX染色体についてDNAコピー数の変化を解析し、治療開始後の生存期間との相関を検討した。 結果:以下のような染色体異常が検出された(以下、染色体短腕をp, 長碗をq, 重複を+, 欠失を-で表す):-5q (8/18, 44%), +7p (9/18, 50%), -8p (10/18, 56%), +8q (7/18, 39%), +13q (12/18, 67%), -17p (12/18, 67%), -18q (13/18, 72%), -18p (11/18, 61%), +20q (15/18, 83%). 8qに異常がなく、18qの欠失を伴う症例ではそれ以外の症例に対し有意に予後が不良であった(P=0.0135). また遺伝子増幅を伴う症例では伴わない症例に比し予後が不良である傾向が認められた(P=0.0527). 異常を伴う染色体数が10以上の症例では10未満の症例に比べ明らかに予後が不良であった(P=0.0017). また遺伝子増幅、染色体欠失及び重複をイベントとした場合、イベント数が10を超える症例では10以下の症例に比し予後が不良であった(P=0.0423). 結論:複雑な染色体異常を有する症例ではFOLFOX治療後の予後が不良であると考えられた。今後、染色体異常に基づいた治療体系の層別化が望まれる。
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