研究課題/領域番号 |
23590941
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯島 英樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90444520)
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研究分担者 |
辻井 正彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40303937)
西田 勉 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467575)
新崎 信一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60546860)
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キーワード | 小腸粘膜障害 / NSAIDs / パイエル板 / CD103陽性樹状細胞 |
研究概要 |
BALB/cマウスを用いてインドメタシン皮下投与による小腸粘膜障害モデルを作成したところパイエル板では樹状細胞やCD4陽性T細胞数が有意に増加した。さらに、インドメタシン投与マウスのパイエル板や腸間膜リンパ節では免疫寛容に関与するとされているCD103陽性樹状細胞が有意に増加するとともに、腸管粘膜固有層でのIL-10産生CD4陽性T細胞が有意に増加していた。実際、CD103陽性および陰性樹状細胞をナイーブT細胞と共培養すると、CD103陽性樹状細胞においてCD103陰性細胞に比して有意にIL-10産生CD4陽性細胞を誘導することが明らかとなった。 一方、胎生期にIL-7レセプター抗体を投与することにより作成したパイエル板欠損マウスでは、インドメタシン小腸粘膜障害がパイエル板非欠損マウスに比して増悪するとともに、腸間膜リンパ節におけるCD103陽性樹状細胞の減少、腸管粘膜固有層におけるIL-10産生CD4陽性T細胞の減少が認められた。 パイエル板欠損、非欠損マウスにおいて抗生剤を経口投与することにより腸内細菌を除去した上、インドメタシン誘導小腸粘膜障害を作成しても、パイエル板欠損マウスにおいて粘膜障害がより重篤であり、パイエル板の有無による小腸粘膜障害の程度の差は腸内細菌には影響されないことが明らかとなった。 さらに、CD103陽性樹状細胞を移入したマウスではCD103陰性樹状細胞移入マウスに比してインドメタシン誘導性小腸粘膜障害の程度はより軽度であり、CD103陽性樹状細胞はインドメタシン小腸粘膜障害に対する改善効果を有することが明らかとなった。 これらのことから、パイエル板は腸炎抑制作用を有するCD103陽性樹状細胞の誘導に重要な役割を持つことが明らかとなり、治療の有望なターゲットであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度以降の検討として、パイエル板CD4陽性T細胞機能修飾についての検討を挙げたが、野生型BALB/cマウスを用いた実験およびIL-7レセプター抗体によるパイエル板欠損マウスを用いた検討において、インドメタシンによる小腸粘膜障害におけるパイエル板の重要性を明らかに示すことができた。さらにこの現象だけでなく、免疫抑制作用を持つCD103陽性樹状細胞やIL-10産生CD4陽性細胞との関連も明らかにすることができ、免疫制御に基づく粘膜障害の変化を明らかにできている。 腸内細菌やパイエル板共生細菌の変化について、今年度は腸内細菌との関与について検討したが、腸内細菌の関与がない事が明らかとなり、パイエル板に寄生したAlcaligenesなどの共生細菌がパイエル板を介したCD103陽性樹状細胞の誘導に関与する可能性を示していると考えられる。 ヒトパイエル板の変化については、炎症性腸疾患患者のパイエル板に形態学的変化が存在することを報告し、疾患とパイエル板の検討も進んでいる。 今後、パイエル板に共生する細菌の詳細な検討を行う必要があるが、今年度までにおおむね順調に研究は進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
パイエル板を介した小腸粘膜障害の制御に対して腸内細菌の関与は乏しいため、次にパイエル板から取り込まれるとされる食事性蛋白抗原の関与を明らかとする。経口的に摂取された食事抗原がパイエル板でのCD103陽性樹状細胞の誘導に関与する可能性がある。したがって、卵白アルブミンなどの蛋白抗原を用いてCD103の誘導やIL-10産生CD4陽性T細胞への誘導の関与を明らかにする予定である。また、これらの結果について、論文化の上、成果を公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、動物の購入、実験試薬、器具の購入および論文校正費用、投稿費用等に充てる予定である。
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