研究課題/領域番号 |
23590942
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石原 俊治 島根大学, 医学部, 准教授 (80263531)
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キーワード | 制御性B細胞 / 炎症性腸疾患 / 自然免疫 / IL-10 / クローン病モデルマウス |
研究概要 |
私共のこれまでのクローン病モデルマウス(SAMP1/Yit)を用いた検討で、クローン病の病態における制御性B細胞の機能異常が明らかとなていた。 その後のマウスの実験では、SAMP1/Yitの腸管膜リンパ節から分離したCD4陽性T細胞をSCIDマウスへ移入した腸炎モデルを作製し、同時移植した制御性B細胞が腸炎発症や増悪に影響を与えるかを実験的に評価した。最初に制御性B細胞特異的な表面マーカーの探索をおこなった。IL-10を産生するB細胞を制御性サブセットと考え検討をおこなったところ、CD1dhighCD19highのポピュレーションがIL-10を有意に産生する細胞集団であることが明らかとなり、本表面マーカーによって制御性B細胞を規定した。SCIDマウス移入モデルでは、全B細胞移入を共移入した群に比べて、制御性B細胞(CD1dhighCD19highのB細胞)を除去したB細胞を共移入した群において、有意に腸炎の程度が増悪した。本検討は、制御性B細胞が腸炎の発症や増悪に関わる可能性を示唆する新知見である。 その後、制御性B細胞の炎症抑制機序について制御性T細胞との関連を実験的に検討した。SAMP1/Yitの腸管膜リンパ節から分離したCD4陽性T細胞から制御性T細胞サブセット(CD4+CD25+)を除去したT細胞群を調整し、SCIDマウスへ移入した腸炎モデルを作製した。制御性T細胞サブセットの除去によってSCIDマウスの腸炎は明らかに増悪した。このマウスに全B細胞移入および制御性B細胞(CD1dhighCD19highのB細胞)を除去したB細胞を共移入した2群の腸炎モデルを作製したが、同様に制御性B細胞による炎症抑制が確認されたことから、本モデルでは制御性T細胞非依存的に制御性B細胞が炎症を抑制している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、ヒトのクローン病の病態における制御性B細胞の免疫調節機序を明らかにした。その後、制御性B細胞の表面マーカーを同定し、SCIDマウスへのT細胞移入腸炎モデルを用いた制御性B細胞の機能解析をおこなうことによって、腸炎発症や増悪の病態における制御性B細胞の役割を明らかにした。現時点までの研究の進行状況は順調であり、申請時に仮説として記述した制御性B細胞の機能について概ね明らかにすることができた。今後は治療応用という観点からの研究の推進を考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の最も重要な課題は、生体内で制御性B細胞の分化・活性化が誘導できるシステムを樹立することである。現在、体外で調整したアポトーシス細胞を生体内に移入するによって、制御性B細胞の生体内での誘導の試みをおこなっている。上記と同様のSCIDマウス腸炎モデルにアポトーシスを誘導したマウス胸線細胞を移入する系の樹立、およびアポトーシス細胞の炎症抑制機序における制御性B細胞の役割について研究を進めている。本研究によって、アポトーシス細胞の移入による制御性B細胞の分化・活性化によって腸炎が抑制されることが明らかとなれば、次のステップとして、ヒトクローン病の治療応用を目指した研究を立案していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、消耗品として用いるPCRの際に使用する酵素類が予定より少ない量で実験が遂行可能であったことから、配布研究費の67895円の未使用となった。平成25年度に配布予定の80万円に67895円を加えた研究費で平成25年度は研究を遂行する。これまでの継続でアポトーシス細胞の移入実験を主に行う。支給額のうちSCIDマウスおよびAKR/Jマウスの購入に20万円、消耗品に15万円を支出する。また各種抗体の購入に15万円支出する。成果の発表として海外学会の旅費および宿泊などのために約35万円を支出する。
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