研究概要 |
放射線腸炎は、腹部悪性腫瘍放射線治療の代表的晩期有害事象の一つで、今日においても対症療法で対応しており、難治例の根本治療はない。手術後も、直腸膀胱障害やリンパ浮腫を悪化させ、QOLを低下させる場合もある。昨今の強度変調放射線治療(IMRT)などの発達により、放射線治療の症例が増大することが予測され、放射線腸炎に対する画期的な治療法の開発が急務である。今回、放射線腸炎に対する自家脂肪組織由来前駆細胞による細胞再生治療の確立を目指し基礎・臨床研究を行っている。我々はES細胞用の培養液を工夫した特殊な培養環境で、ヒト組織より採取された初代細胞株が分化せずに前駆細胞機能(多分化能)を維持したまま細胞分裂することを示した。(K. Suzuki, N. Mitsutake, A. Ohtsuru, et.al. Dedifferentiation of human primary thyrocytes into multilineage progenitor cells without gene introduction. PLoS ONE 27;6(4): e19354, 2011.)さらに、ヒトへの臨床研究に向け、大動物実験や、すでにスタートしている放射線皮膚潰瘍に対する臨床研究の詳細な解析を行った(A. Ohtsuru, S. Akita,et.al. Development of novel treatments for radiation-related diseases in nuclear power plant accident. A New Challenge of Radiation Health Risk Management M. Nakashima, et.al.(Eds) Nagasaki Newspaper Publish 181-191, 2012.)
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