研究課題/領域番号 |
23590946
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大津留 晶 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00233198)
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研究分担者 |
磯本 一 長崎大学, 大学病院, 准教授 (90322304)
中島 正洋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50284683)
吉本 浩 長崎大学, 大学病院, 助教 (90513309)
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キーワード | 放射線腸炎 / 急性放射線症候群 / 緊急被ばく医療 |
研究概要 |
放射線腸炎は、放射線治療の代表的晩期有害事象の一つで、昨今の強度変調放射線治療などの放射線治療の進歩により、腹部領域への悪性腫瘍に対する治療数全体は増加することが想像される。新しい治療は放射性腸炎の発生頻度は減少すると思われるが、症例数自体は増加すると予想される。また2011年3月11日の東日本大震災後の原子力災害からの復興において、福島県では特に、原発事故後の廃炉に向けた復旧作業中の事故による急性放射線障害に対しても治療法を確立しておく必要があると考えられる。 自家組織由来前駆細胞は、生理的な多分化能を有していることを検討する目的で、ES細胞用の培養液を工夫した特殊培養環境で、ヒト組織の初代細胞株が最終分化はせずに前駆細胞機能と多分化能(脂肪細胞への分化や神経細胞への分化能)を維持したまま細胞分裂できることを検討した。(K. Suzuki, et.al. Dedifferentiation of human primary thyrocytes into multilineage progenitor cells without gene introduction. PLoS ONE 27;6(4): e19354, 2011.)本研究とは別の対象疾患ではあるが、将来の臨床研究に備えて、難治性放射線皮膚潰瘍に対する細胞治療臨床研究症例の比較解析も行った(S. Akita,et.al. Early experiences with stem cells in treating chronic wounds. Clin Plast Surg 39(3):281-92, 2012.他)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が福島県立医科大学に異動したことにより、本研究は当初予想した放射線治療後の有害事象としての放射線腸炎に対する細胞治療という意味だけでなく、事故原発の廃炉に向けた作業中の急性放射線障害に対する緊急被ばく医療治療への応用可能な基盤研究とすることも大切であると思われる。そのため実際の放射線治療後の放射線腸炎の患者への臨床研究については、前臨床研究レベルまでの基礎研究や基盤研究に限定していて、予定していない。よって臨床応用という面では達成度は不十分ではあるが、まだまだ検討すべき課題があり、一層の基盤研究が重要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験における有効性の検討を行い、その結果もし細胞移植の効果が何らかの重要なサイトカイン等の発現により規定されていると推定されるならば、中和抗体やsiRNAなどによる検討を行う。その結果次第ではサイトカインカクテル治療の効果も検討する。実際の症例の病理解析によりそれらの遺伝子発現と病態の変化の関連を検討する。 自家脂肪組織由来前駆細胞の放射線腸炎への臨床応用への可能性がもしあると判断されるならば、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針への申請に必要な研究データ集積を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
症例の病理解析や動物実験などに必要な試薬やその他の諸費用。関連する学会発表、論文作成などに必要な費用。学会発表や共同研究などの打ち合わせに必要な旅費等。
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