研究課題/領域番号 |
23590948
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡沢 啓 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50286457)
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研究分担者 |
金井 隆典 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (40245478)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腸内細菌フローラ / 炎症性腸疾患 / probiotics |
研究概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は原因不明で慢性かつ難治性であるが、近年その病態の解明が進み、従来の治療と生物学的製剤を組み合わせて、多くの症例が緩解に至ることが可能になった。しかし、生物学的製剤に抵抗性を有する例が確実に存在しており、現在までその原因は全く解明されていない。一方、IBD患者では過剰な免疫反応を抑制的に制御する機構が崩れ、腸内細菌が炎症を惹起する免疫反応を誘導しているとされる。以上より腸内細菌フローラのパターンが生物学的製剤の薬剤抵抗性と密接に関連することが予想された。これまでの腸内細菌研究はほんの一部の腸内細菌のみの検出しか達成できない培養法が主体であったが、我々は新規の糞便腸内細菌フローラライブラリーの検出、定量化をRT-qPCR法によって解決してきた。今回、同意取得できた潰瘍性大腸炎、クローン病患者より、治療前及び治療後(infliximabは0週、2週、6週の投与直前、FK506、ステロイドは投与前、2週間後)に糞便を採取した。定量的RT-qPCR法による潰瘍性大腸炎9名の解析では、糞便1g中に含まれる細菌数の合計は治療前後で有意に上昇していた。Clostridium Coccoides groupについては治療前後で有意な菌の上昇を認めた。9名中1名は治療抵抗性であり他の治療に切り替えられたが、治療前後でClostridium Coccoides groupの減少を認めた。治療前後でのClostridium増加の割合についても、若年者の方が顕著であった。Clostridium coccoidesは潰瘍性大腸炎若年者治療介入後に多いこと、治療介入前には菌数が減少しているということからClostridium coccoidesの中に炎症を抑制するProbioticsが存在する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、当該年度においては、活動性クローン病、活動性潰瘍性大腸炎、健常コントロールの糞便腸内細菌フローラ解析をRT-qPCR法によって行い、腸内細菌ライブラリーを作成し、その際、IBD特異的腸内細菌の同定を行い、平成24年度に治療介入前後の腸内細菌フローラ解析を行う予定であった。現在までに、IBD患者の腸内細菌ライブラリーの作成と並行して、すでに前倒しで同一患者治療介入前後の腸内細菌フローラ解析も行なっているが、予定より下回る例数しか施行できていない。今後、例数を増やすとともに、Clostridiumの亜群解析も含め解析を急ぎたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では同一IBD患者の治療前後でのClostridiumの変化に注目したところ、治療介入後でClostridium coccoidesが有意に増加していた。一方、1例のみであるが治療抵抗患者は治療後にClostridium coccoidesが減少していた。Clostridium coccoidesは潰瘍性大腸炎若年者治療介入後に多いこと、治療介入前には菌数が減少しているということ、また、Clostridium groupにおいて制御性T細胞を誘導するとAtarashiらが報告しており(Science 331: 337-41, 2010.)、腸炎抑制を誘導するProbioticsが存在する可能性が高いと考えられる。今後は細分化による詳細検討が全くなされていなかったClostridiumの亜群解析を行う予定である。また、潰瘍性大腸炎のみならず、健常者、クローン病においても例数を増やし、腸内細菌ライブラリーの作成、治療前後の腸内細菌の変化について解析したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費使用予定詳細消耗品費:1,500,000円、その他(解析費用など):300,000円→合計1,800,000円。
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