研究課題/領域番号 |
23590954
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
岡田 義清 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 助教 (90531137)
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キーワード | 消化器内科 / プロバイオティクス / 炎症性腸疾患 / 樹状細胞 / Th17細胞 / 炎症性サイトカイン / 乳酸菌 / 発酵食品 |
研究概要 |
申請者らは、伝統的発酵食品である「ふなずし」より炎症性腸疾患の動物モデルの腸炎に優れた予防・治療効果を有する新規ラクトバ シラス属菌菌株を2株、単離した。本菌株は、DSS大腸炎モデルマウスにおいて、乳製品由来のプロバイオティクスであるLactobacillu s gasseri(以下、LGと表記)を上回る抗炎症作用を有していた。 平成24年度においては、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌株(以下、本菌株と表記)の自然免疫系細胞への影響を検討した。その結果、本菌株を作用させた自然免疫系細胞である骨髄由来樹状細胞は、LGを作用させた場合と同程度の抗炎症性サイトカインであるIL-10を産生した。しかしながら、一方の抗炎症性サイトカインであるTGF-beta産生は、LG作用群に比し有意に上昇していた。興味深いことに、炎症性・抗炎症性の両面を併せ持つサイトカインであるIL-27産生が、LG投与群に比し大幅に増加しており、このデータはDSS大腸炎モデルマウスにおける二次リンパ組織(腸間膜リンパ節および脾臓) における自然免疫細胞(樹状細胞)の動態を裏付ける事になった。また、二次リンパ組織における樹状細胞の表面マーカーについて検討したところ、本菌株投与群ではCD103陽性樹状細胞数はLGに比し変化が認められなかったが、CD8a陽性樹状細胞数が有意に増加していた。 以上の結果を元に米国消化器病学会2012(DDW2012, SanDiego)および日本食品免疫学会にて学会発表を行った。本年度の研究成果は、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌がもつ強力な抗炎症作用と特異的な性質を解明するのに必要なデータとなりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌菌株の自然免疫系細胞への影響を精査した。その結果、複数の炎症性・抗炎症性サイトカイン産生を定量し、本菌株に特異的なサイトカイン産生パタ ーンを見出すことができた。これにより、二次リンパ組織(腸間膜リンパ節および脾臓) における自然免疫細胞(樹状細胞)の動態を裏付けることができた。 さらに、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌菌株の投与で、二次リンパ組織(腸間膜リンパ節および脾臓)における樹状細胞が特異的な表面マーカーの発現パターンを示すことが示された。 以上のデータは、 新規ラクトバシラス属菌がもつ強力な抗炎症作用と特異的な性質の解明にむけての順調な進捗を示している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果より、ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌は抗原提示に主要な役割を果す樹状細胞に特有の変化を惹起する事実が示された。 このため、今後は樹状細胞を用いた実験大腸炎モデルの予防・治療の検討およびT細胞への抗原提示を中心とする推進方策とする。 すなわち、マウス骨髄細胞より樹状細胞を分化させin vitroにて本菌株を暴露することで、ふなずし由来新規ラクトバシラス属が誘導する特異な樹状細胞を誘導する。これにより各種の実験大腸炎モデルへの予防・治療を検討する。また、同細胞と未熟T細胞と共培養することで、T細胞サブセット分化への影響も検討する。 さらに、同細胞が有する特異的なサイトカイン産生を制御する分子群とその細胞内シグナル伝達についての検索を実施し、作用機序の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、これまでの定量PCR法による遺伝子発現解析から、ELISA法およびウェスタンブロット法によるタンパク質発現解析にシフトする予定であり、次年度使用額を購入費に充てる。さらに、研究の進捗 により、本研究の柱であるふなずし由来新規ラクトバシラス属菌の強力な抗炎症効果のメカニズムを制御する分子群が判明した場合は、その分子群の関わりを証明するための各種阻害剤および遺伝子欠損実験に使用する予定である。
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