申請者らは、伝統的発酵食品である「ふなずし」より新規ラクトバ シラス属菌菌株を2株、単離した。本菌株は、DSS大腸炎モデルマウスにおいて、乳製品由来のプロバイオティクスであるLactobacillus gasseri(以下、LGと表記)を上回る抗炎症作用を有していた。 ふなずし由来新規ラクトバシラス属菌株(以下、本菌株と表記)をin vitroにて作用させた骨髄由来樹状細胞は、抗炎症性サイトカインの性質を有するTGF-bのmRNA発現を亢進することが確認された。培養上清中へ放出された活性化型のTGF-b濃度を測定したところ、LG作用群に比し有意に上昇していた。さらに、平成28年度においては、TGF-bを活性化型へ誘導する特徴的なインテグリン分子であるav/b8インテグリンを特異的に増加させることを見出した。av/b8インテグリン発現は、DSS大腸炎モデルマウスの樹状細胞においても本菌株を投与した場合のみ、強く発現していた。 以上より、本菌株は未成熟樹状細胞に対し特徴的な形質変化を惹起することが推察された。そこで、骨髄由来樹状細胞に本菌株を作用させることで得られた成熟樹状細胞を、未熟T細胞と共培養すると、LG作用群に比しTreg細胞を有意に誘導した。さらに、平成28年度では、本菌株により成熟した樹状細胞をDSS大腸炎モデルマウスに移入したところ、経口投与と同程度の抗炎症作用を示すことを認めた。これらの結果より、本菌株は樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞に直接的に作用することでユニークな形質変化を惹起し、大腸固有粘膜層におけるTreg細胞を増加させることで、LGより強い抗炎症作用を示すことが示唆された。以上の事実より、日本の伝統的発酵食品は、従来のプロバイオティクスに比し強い抗炎症作用を有する未知のプロバイオティクスの有力な単離源となり得る事が示された。
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