研究課題
本年度は、TWEAK/Fn14の下流のシグナルについては、マウスへのTWEAKを投与実験、腸炎モデルへの抗TWEAK抗体投与実験により、TNF-a下流のNF-kB経路とのクロストークを示唆する結果が得られた。また、近年注目されているヒトゲノム上の遺伝子以外の配列Long interspersed nuclear element, (L1)に着目した実験を行った。L1は挿入部位によっては遺伝子機能を傷害して疾患発症の誘因となり、ゲノム不安定性の原因としても重要であると考えられる。通常L1エレメントはDNAメチル化によりサイレンシングされているが、癌組織ではL1エレメントの低メチル化が特徴であり、L1が活性化された状態にあると理解されている。我々はL1は炎症によってエピジェネティックな制御により活性化が誘導される可能性があると考え、DNA傷害物質による炎症発癌モデルでL-1が発癌に関与している可能性を想定した。難治性疾患研究部石坂らにより作製されたヒトL1-GFPトランスジェニックマウスを用い、発癌剤アゾキシメタンとデキストラン硫酸飲水内投与による大腸炎誘導を行い、L1活性化を調べた。本実験系ではL1活性化は非常に頻度が低く、GFPの発現では検出が困難であったため、低頻度の活性化L1を増幅して定量するPCR系をまず確立した。その結果、L1-Tgマウスでも腫瘍は形成されたが、それらの腫瘍の大部分では活性化L1を検出することができず背景粘膜での頻度も低かった。一方、大腸では急性炎症時に最も高い頻度で活性化L1が検出されるが、上皮細胞ではなくそれ以外の細胞種で頻度が高いことが、マイクロダイセクションを用いたサンプリングなどで明らかとなった。したがってL1活性化は、上皮細胞の遺伝子異常に直接関わっているのはなく、上皮細胞以外の細胞分画で炎症応答に関わっていると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
予定していたTWEAK/Fn14に依存するシグナル経路、及び大腸の炎症発癌に関わるL1活性化に関する成果を得ることができた。
計画通り、TWEAK/Fn14欠損マウスなどに抗癌剤投与を行い、その感受性を調べるとともに、NF-κB canonical及びnon-canonical 経路を中心に、シグナル経路を解析する。炎症発癌モデルについてはL1活性化が腫瘍や上皮細胞以外の細胞に起こっていたことは新たな発見であり、今後L1活性化がどの細胞で起こっているのかを詳しく同定していく必要がある。
該当無し
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