研究課題
最終年度はDDX20の発現低下に伴う肝発癌の分子機構について、最終的な検討を行った。肝癌ではDDX20の発現が低下していることが多いことはこれまでの組織学的な検討で明らかになっていたが、その分子機構解析で、DDX20はmicroRNAの成熟に必要な複合体の形成因子であり、その発現が低下するとあるサブセットのmicroRNAの発現が減少することも示してきた。最終年度はその一つであるmicroRNA140-5pの発現が減ることをmicroRNA140-3pの発現量変化との比較によって示した。microRNA140-5pの発現が減ることによってその標的因子であるDMNT1の発現が増強し、その結果、標的分子であるメタロチオネインの発現が減ることが明らかとなった。メタロチオネインは細胞内の解毒酵素のひとつであり、その発現がへることによって細胞内のNF-kB作用が増強され発癌に結び付く可能性が示唆された。実際にmicroRNA140のノックアウトマウスで肝臓に化学発癌を惹起したところ、microRNA140のノックアウトマウスでは発癌が増えるとともに、Dnmt1の発現が増えてNFkBの活性が増強していた。これらの結果から、B型肝炎感染に伴ってDDX20の発現が減少することにより、細胞内のDnmt1の発現が増え、NFkB活性が増強することが、B型肝炎からの易発癌性のひとつの機序となっていることが示唆された。これらの結果を踏まえると、microRNA140の補充やNFkB阻害などが肝発癌の抑止に効果を示すことが想定され、今後の肝発癌抑止策に寄与する可能性が示唆された。
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Hepatology
巻: 57(1) ページ: 162-70
10.1002/hep.26011
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