研究課題/領域番号 |
23590962
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
椎名 秀一朗 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70251238)
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研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20396948)
浅岡 良成 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90431858)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肝癌 |
研究概要 |
癌細胞のゲノムでは、特定の遺伝子領域で増幅や欠失が起こることが知られている。近年、大規模SNPタイピングを目的として開発された高密度オリゴヌクレオチドアレイが、染色体コピー数変化およびLOHを同時に解析できるということがわかった(下図・例)。そこで、当研究室ではこのアレイを用いて消化器癌細胞株のゲノム異常の網羅的解析を行ってきた(Oncology. 2008;75(1-2):102-12. J.Hepatol.2008 Nov;49(5):746-57)。解析の結果、肝がんにおいて新規に増幅および欠失あるいはLOHを認めた染色体領域の中に、ヒストン修飾酵素遺伝子も含まれていた。これらの異常が実際の臨床検体において認められるかどうかを検討するために肝がん治療症例に対し、倫理委員会ですでに承認の得られている同意説明文書にて十分に説明し、文書同意を得た後、血清、癌部・非癌部の組織を取得してきた。これらの患者の臨床情報については個人情報保護を遵守しつつ詳細な情報を記録するデータベースを構築してきた。一方、肝発がんとEpigenetic な遺伝子発現調節の関連について別の知見も得ている。当研究室では肝細胞特異的PIK3CAトランスジェニックマウスを樹立しているが、このマウスは肝臓への著明な脂肪蓄積とともに腫瘍を発生する。この腫瘍部と非腫瘍部では脂肪酸組成プロファイルに明らかな構成比率の差がみられ、腫瘍でオレイン酸の蓄積が目立つ。興味深いことに、このオレイン酸による腫瘍抑制遺伝子発現抑制を見出したが、さらにその抑制は、ヒストン脱アセチル化酵素やヒストンメチル化酵素の阻害剤にてリバースされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように肝癌の腫瘍部・非腫瘍部からレーザーマイクロダイセクションシステムによりDNAを分離採取してきた。これまでに肝がん細胞株を用いて見出してきた、ヒストン修飾酵素遺伝子領域の増幅、欠失、LOHが実際の臨床検体において認められるかどうかを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
SNPアレイを用いて肝がん細胞株で同定したヒストン修飾因子の遺伝子異常について、臨床検体を用いて検討する。結果についてHBV, HCV, NASHなど由来の異なる肝がんごとにデータを収集・総括し、遺伝子異常が背景因子に関連するのかどうかも検討する。PIK3CA TGマウスにヒストンメチル化酵素の阻害薬を投与し、脂肪肝および腫瘍形成への影響を検討する。さらにヒストン修飾酵素の遺伝子改変マウスとの交配により、脂肪肝および腫瘍形成への影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
定量的PCRによる遺伝子増幅のvalidationなどを目的とした試薬購入、およびマウス実験のためのマウス購入費、飼育代などを中心に使用する予定である。
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