研究概要 |
昨年同様アレクサンダー細胞株における組み込み部位の解析を行った。この細胞株はHBV粒子そのものを産生するわけではないが、HBs抗原を産生し、細胞外に分泌することがわかっている。 FISH (fluorescence in situ hybridization)法により細胞核DNAに組み込まれたHBV DNAがどの部分に由来するかを調べた。市販のFISH probe 11種類を用いて実験を行ったが、アレクサンダー細胞の核にはシグナルは確認できなかった。そこでdigoxigeninでプローブをラベルし、FISHを行ったところ、HBxのプロモーター領域に置いたプローブ、HBx領域の前半分に置いたプローブでのみ蛍光シグナルが確認され、HBVの組み込みがこの近傍で起きていることが示唆された。 そこでX領域前半及びX領域の上流に複数のプライマー(フォワード)を設計し、プライマー(リバース)としてAlu配列を用いたプライマーを用いてAlu-PCRを行った。また、プライマー(フォワード)としてAlu配列を用いたプライマー、プライマー(リバース)としてX領域前半及びX領域の上流の複数のプライマーを用いたAlu-PCRも行った。 アレクサンダー細胞株へのHBVの組み込みは解析した多くのクローンで認められたが、その大部分は第5染色体の非翻訳領域(Chromosome 5: 1, 297, 221-1, 297, 605)への組み込みであった。組み込まれた部分の配列は(図)に示す通りであった。なお、1クローンだけであるが、TMP 195遺伝子のエクソン上への組み込みが認められた。TMP 195は肝臓に多い細胞膜蛋白であるが、その性質、機能に関しては不明である。 なお、臨床検体を用いた組み込みの実態に関しては次世代シークエンサーを用いた検討がほぼ終了し、現在解析中である。
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