研究課題
肝再生療法として効率の良い細胞治療法の開発が求められる。しかし注入された幹細胞がどのように肝臓に遊走・生着・分化していくのか、また効率の良い肝臓内ニッチの探索はなされていない。本研究では、①ライブイメージングの手法を用いて、レポーター遺伝子で標識した間葉系幹細胞がどのように肝臓に遊走・生着・分化していくのか、時間・空間的動態をミクロおよびマクロで解析する。さらに、②肝臓内ニッチに発現する有用な分子を解析し、細胞外マトリックスの有用性とMMP発現の意義を明らかにすることを目的として研究を進めた。今年度は、慢性四塩化炭素障害を起こした肝硬変モデルのヌードマウスに蛍光ラベルしたヒト株化間葉系幹細胞を注入し、長期間動物を経時的に観察して細胞の分化を観察した。多光子レーザーを使用することにより、ヒト間葉系幹細胞は肝臓への遊走・生着したことを確認し、さらにFACSを用いて、移植した細胞の分化を経時的に検討して、現在論文作成中である。 一方、肝臓ニッチの解析のために、EGFP/MMP-9 KO double TG マウス移植動物モデルを用いて、肝臓におけるMMP-9の重要性を検討した。その結果、慢性四塩化炭素投与マウス(肝硬変モデル)に間葉系幹細胞を投与したところ線維化部位に幹細胞の遊走が確認され線維化は改善された。さらにFACS解析から遊走したそれらの細胞のうち約50%がMMP-13を、また25%がF4/80を表出しており一部マクロファージとして分化することが確認され、線維化改善に寄与することが確認された。また、細胞の遊走は細胞がMMP-9 KOの場合、またRecipientがMMP-9 KOマウスで著明に減少することが確認され、ニッチにおけるSDF-1の濃度勾配が重要であることを再確認した。
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