研究課題
脂肪組織由来間質細胞への遺伝子導入の効率と細胞への影響を解析した。遺伝子導入には、NucleofectorTM 2b(Lonza)を用いたエレクトロポレーション法を用いた。C57Bl/6J♂の鼡圣部脂肪組織より間葉系間質細胞を分離、12代継代培養した幹細胞4x10^5個へ、(i)CMVプロモーター下にenhanced yellow fluorescent protein を発現するプラスミドpDC316.EYFP 2 microgramを、細胞懸濁液としてPBS(-) (ii) pDC316.EYFP 2 microgramとhuman MSC, nucleofector solution(LONZA)バッファー、(iii) pDC316.EYFP 5 microgramとPBS(-)(iv) pDC316.EYFP 5 microgramとLONZAバッファー、の各条件にて遺伝子導入を行った。導入後24時間後および144時間後にフローサイトメトリーを用いてEYFP発現細胞数を評価したところ、それぞれ(i)28.3%、37.3 (ii) 31.4%、19.1% (iii) 24.3%、16.9% (iv) 39.6%、37.3%、の細胞が蛍光発現していた。(i)では、細胞増殖がみられず、(ii) (iii)(iv)では、細胞は増殖し、その増殖能は、遺伝子導入後24時間での細胞数と比較した144時間での細胞数の比として評価した場合、(ii)で1.4倍、(iii)で1.7倍、(iv)で2.3倍であった。遺伝子導入後21日後では、(ii)1.1%、(ii) 2.6%の細胞がEYFPを発現、17日後で(iv)の条件で、1.9%が発現していた。これらの結果より、(iv)での遺伝子導入にて細胞障害性が少なく、導入発現効率が良好であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
エレクトロポレーション法による遺伝子導入の条件が確立され、細胞障害が少なく、導入効率が良い条件で今後の研究を行うことができるようになった。
見出した最適の遺伝子導入、発現方法を用いて、肝細胞への分化を促進され、肝疾患にたいして修復再生能を有する修飾方法の開発を次年度以降行っていく。炎症、線維化、肝細胞の合成機能の補充、の慢性肝疾患の多面的な病態を考慮しながら、遺伝子導入による間葉系幹細胞の修飾方法を開発する。
本年度行う予定であった肝細胞への分化に関与する転写因子遺伝子の間葉系幹細胞への導入を、本年度最適化したエレクトロポレーションの遺伝子導入条件によって、次年度行う。また、さらに、複数の導入候補の遺伝子について、本年度確立した最適な導入、発現方法を用いて、間葉系幹細胞へ導入し、肝細胞への分化を促進し、肝疾患にたいして修復再生能を有する修飾方法の開発を次年度以降行っていく。遺伝子導入により分化誘導を条件づけた細胞について、経時的に、アルブミンなど肝細胞に特異的な遺伝子、蛋白発現を評価し、前臨床肝疾患マウスモデルでの検討前の基礎的な評価を行う。これらの検討において、抗体、リアルタイムPCRのプローブ、プラスミド大量調製の試薬等の購入を予定する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Cancer Lett
巻: 307 ページ: 165-173
Hepatology
巻: 53 ページ: 1206-1216
Gastroenterology
巻: 141 ページ: 128-140