研究課題
本研究は次世代シークエンサーを用いて、HLA領域に遺伝要因が存在する自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変 (PBC) 患者のHLA領域のリシークエンシングを行い、真の疾患感受性遺伝子とその多型・変異を特定し、臨床応用へと展開することが目的である。本年度はPBCにおけるHLAタイピングを施行した。HLA-DRB1*08:03-DQB1*06:01、DRB1*04:05-DQB1*04:01ハプロタイプはPBCの疾患感受性である事を明らかにした。さらに、HLA-DRB1*13:02-DQB1*06:04とDRB1*11:01-DQB1*03:01ハプロタイプは疾患抵抗性である事を本邦で初めて明らかにした。HLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプは肝移植になった患者において高率に陽性であることを認め、疾患進行と関連がある可能性を示唆した。これらの結果をHepatologyに発表した。さらに、多施設との共同研究により次世代シークエンサーを用いたHLAクラスIとクラスII遺伝子を8桁レベルの超高解像度DNAタイピング法(super high resolution single molecule-sequence based typing; SS-SBT) 法を開発した。この方法を使用することにより今まで曖昧であったり推測で決定されていたHLAのタイプを決定することが可能となった。この方法はイントロン部を含めた遺伝子全領域の新規多型や構造変化が検出可能な優れたタイピング法であり、Tissue Antigensに報告した。
2: おおむね順調に進展している
現在までにPBCのHLAタイピングを終了して報告した。HLA領域の超高解像度DNAタイピング法(super high resolution single molecule-sequence based typing; SS-SBT) 法を開発した。この方法を用いて現在AIH、PBCをそれぞれ30例を解析中であり、計画は順調に進展している。
最終年度の予定はHLA領域の超高解像度DNAタイピング法(SS-SBT法)を用いてHLA-DRB1*04:05-DQB1*04:01アリルを保有するAIH30症例、HLA-DRB1*08:03-DQB1*06:01アリルを保有するPBC30症例を用いてそれぞれの疾患に特徴的な感受性アリルの塩基配列を決定して、構造的相違や変異の有無について検討を行う。肝不全、肝がんを発症した病期の進行した症例において臨床背景とHLA領域の変異の関連性についても解析を予定している。
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了しており次年度使用額が生じた。この予算はSS-SBT法を用いてAIHとPBC患者の検体でHLAのタイピングを施行するための消耗品の購入に使用する。さらに、25年度経費では予定通りHLA領域のリシークエンシングを行うためのPCRや次世代シーケンサーでの検討をするための消耗品の購入に使用する。研究発表を各学会で報告するための旅費と、論文を作成する際の英文チェックのためにも使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
Human Immunology
巻: 74 ページ: 219-222
10.1016/j.humimm.2012.10.022
Hepatology
巻: 55 ページ: 506-511
10.1002/hep.24705
巻: 73 ページ: 298-300
10.1016/j.humimm.2011.12.021
Tissue Antigens
巻: 80 ページ: 305-316
10.1111/j.1399-0039.2012.01941.x