研究課題
肝細胞を始めとする肝構成細胞の、炎症・免疫応答への反応、その後の生体応答に与える影響を明らかにするため、肝構成細胞をin vitro での炎症刺激による擬似肝炎環境下におき、主にケモカイン/サイトカイン(Ch/Cy)応答について解析した。これにより、これまで個体レベルでみていた肝炎という現象を、細胞レベルで詳細に解析することを目的とした。3種の肝癌細胞株(HepG2、Huh7、Hep3B)において、IL-1α、TNF-α、IFN-γ、IL-4、IL-10、TGF-βを単独あるいは組み合わせて刺激に用い、刺激後のCh/Cy発現を定量PCRで解析した。いずれの肝癌細胞株でも、IL-1α刺激によるIL-8、IP-10発現の増強など、共通の反応パターンが確認された。一方、IL-1α刺激によるMDC、TARCの発現増強がHuh7でのみ認められるなど、細胞間の反応パターンの違いも認めた。また、無刺激状態では、Hep3BがCh/Cyを高発現しているのに対し、HepG2では発現量が低く、Huh7はその中間のパターンを呈していた。HepG2ではp53遺伝子が保たれているが、Huh7、Hep3Bでは変異・欠損している。炎症性Ch/Cy発現に関わる転写因子NFκBはp53の制御を受けるため、Huh7、Hep3BでのCh/Cyの高発現は、NFκBの活性化に対しp53による制御が機能していない結果と考えられた。また、Hep3BはHBs抗原を産生し、HBVの持続感染と類似した状態を呈するため、これが無刺激時のCh/Cy高発現、刺激に対する反応性の低さと関連していると考えられた。肝炎環境のin vitroでの再現のためには、肝細胞の性質がより保存された細胞の使用、他の肝構成細胞との共培養、実際のウイルス感染実験などが必要と考えられ、引き続き、これらの検討を継続している。
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