研究課題
1. de novo B型肝炎におけるHBVの特徴の解析: HBs抗原陰性・HBc抗体陽性健ドナーから肝移植を受けたレシピエントにおける、de novo B型肝炎の臨床的特徴とウイルス遺伝子の変異解析を行った。肝移植後に高力価HBs抗体含有免疫グロブリン製剤によるB型肝炎ウイルス(HBV)活性化予防を行った75例を対象に、肝移植後de novo B型肝炎の発症について解析した結果、19例(25%)でHBVの活性化を認めていることが明らかとなった。その原因としては、HBIGの中止が8例、HBs抗体エスケープ変異株出現が7例、原因不明が4例であった。HBs抗体エスケープ変異株によるHBV活性化の臨床的特徴として、HBs抗原とHBs抗体が共に陽性であること、エンテカビルの早期投与が効果的であることが明らかとなった。HBVの遺伝配列の解析から、HBs抗原内の共通抗原基aに異なる3種類のHBsエスケープ変異を同定した。2. B型肝炎ウイルスの次世代シーケンサー解析: HBVの遺伝子配列の次世代シーケンサー解析の実験方法を確立させた。血中ならびに肝組織からDNAを抽出し、HBV-DNAをHBV特異的なプライマーを用いたPCR法にて増幅後、次世代シーケンサーにて遺伝子配列を同定し、コンピューターソフトを用いてHBVの多様性や薬剤耐性変異を含む既知のHBV変異解析を行った。その結果、血中と肝組織に存在するHBVはいずれも多様性に富んでおり、薬剤耐性変異やプレコア変異、コアプロモーター変異、HBsエスケープ変異を持つウイルスが各症例で種々の割合で存在していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
肝移植後のde novo B型肝炎の臨床像、B型肝炎ウイルスの変異解析を行い、論文発表を行った。一方で、次世代シーケンサーによるB型肝炎ウイルス解析の方法の確立に成功し、今後の解析の準備が整った。当初の研究計画どおりに進行していると考えられ、おおむね順調に進展していると考える。
1. de novo B型肝炎におけるHBVの特徴の解析HBs抗原陽性・HBc抗体陽性ドナーの摘出肝の肝組織よりDNAを抽出し、HBV-DNAをPCR法を用いて増幅し、その全塩基配列を次世代シークエンサーを用いて同定する。さらに、肝移植後レシピエントにde novo B型肝炎を発症した症例、ならびに血液疾患に対する化学療法後や自己免疫疾患に対する免疫調整剤使用後の活性化HBVについて、発症時の血清を用いて同様にHBV-DNA全長の塩基配列を同定し、肝内のHBVの遺伝子配列と比較検討する。2. 肝細胞癌再発とHBV再発との関連の原因解明HBs抗原陽性レシピエントに対する肝移植後のHBIGと核酸アナログ製剤投与中に、肝細胞癌の再発と同時に血中HBV-DNAが陽性化した症例を2例について、移植時の摘出肝の癌部ならびに非癌部のそれぞれから抽出したDNAよりPCR法を用いてHBV-DNAの全長を増幅し、塩基配列を同定する。さらに、肝移植後再発時の血中のHBV-DNAについても同様に遺伝子配列を同定する。癌部、非癌部、血清の3つのHBVの配列を比較することによって、再発HBVの特徴を明らかにする。3. HBVマーカーとHBVの感染様式の解明HBs抗体単独陽性者の肝内のHBV潜伏の有無の解明とHBs抗原陽性・HBc抗体陽性者の肝臓外のHBV存在の有無の解析のために以下の解析を行う。京都大学において行われたHBs抗体単独陽性ドナーからの肝移植後レシピエント52例、ならびにHBs抗原陽性・HBc抗体陽性レシピエント193例について、現在の血中HBV-DNAと各種HBVマーカーを測定し、HBVの活性化例の有無ならびにその割合、臨床的特徴について検討する。
B型肝炎ウイルス遺伝子解析のための消耗品を中心に研究費の使用する予定である。特に次世代シーケンサー解析用の試薬の購入に多くの研究費を使用する。さらに、研究成果発表のための旅費にも使用予定である。
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