研究課題
1. B型肝炎ウイルス(HBV)の次世代シーケンサー解析: HBVの遺伝子配列の次世代シーケンサー解析の実験方法を確立させた。血中ならびに肝組織からDNAを抽出し、HBV-DNAをHBV特異的なプライマーを用いたPCR法にて増幅後、次世代シーケンサーにて遺伝子配列を同定し、コンピューターソフトを用いてHBVの多様性や薬剤耐性変異を含む既知のHBV変異解析を行った。その結果、血中と肝組織に存在するHBVはいずれも多様性に富んでおり、薬剤耐性変異やプレコア変異、コアプロモーター変異、HBsエスケープ変異を持つウイルスが各症例で種々の割合で存在していることを明らかにした。これらの結果を論文として発表した。2. 肝移植後B型肝炎再発の臨床的解析: HBV陽性肝移植症例の肝移植後のHBV再活性化の実態について解析を行った。肝移植後にエンテカビルと高力価HBs抗体含有免疫グロブリン製剤(HBIG)を投与した症例ではHBVの再活性化は認めなかったが、ラミブジン+HBIGによる予防策を行った症例では5年で6%の再発を認めた。HBV再発の原因として、ラミブジンに対する耐性変異株の増加を認めた。これらの解析結果について論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
B型肝炎ウイルスの次世代シーケンサー解析方法を確立し、論文発表を行った。また、肝移植後B型肝炎予防法についての臨床データを解析して論文発表を行った。これらの結果をもとに、現在de novo B型肝炎におけるHBVの特徴の解析、ならびに、肝細胞癌再発とHBV再発との関連の原因検索が進行中である。
1. de novo B型肝炎におけるHBVの特徴の解析:平成23年度から引き続き、HBs抗原陽性・HBc抗体陽性ドナーの摘出肝の肝組織よりDNAを抽出し、HBV-DNAをPCR法を用いて増幅し、その全塩基配列を次世代シークエンサーを用いて同定する。さらに、肝移植後レシピエントにde novo B型肝炎を発症した症例、ならびに血液疾患に対する化学療法後や自己免疫疾患に対する免疫調整剤使用後の活性化HBVについて、発症時の血清を用いて同様にHBV-DNA全長の塩基配列を同定し、肝内のHBVの遺伝子配列と比較検討する。2. 肝細胞癌再発とHBV再発との関連の原因解明:HBs抗原陽性レシピエントに対する肝移植後のHBIGと核酸アナログ製剤投与中に、肝細胞癌の再発と同時に血中HBV-DNAが陽性化した症例を2例について、移植時の摘出肝の癌部ならびに非癌部、ならびに肝移植後再発時の血液のそれぞれから抽出したDNAよりPCR法を用いてHBV-DNAの全長を増幅し、塩基配列を同定する。癌部、非癌部、血清の3つのHBVの配列を比較することによって、再発HBVの特徴を明らかにする。3. HBVマーカーとHBVの感染様式の解明:京都大学において行われたHBs抗体単独陽性ドナーからの肝移植後レシピエント52例、ならびにHBs抗原陽性・HBc抗体陽性レシピエント193例について、測定した血中HBV-DNAと各種HBVマーカーと、HBVの活性化の有無ならびにその割合、臨床的特徴との関連について検討する。
該当なし
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