劇症肝炎マウスモデルを用いて、劇症肝炎の免疫学的病態形成機構の解析を引き続き行った。マウスモデルとして、新生児胸腺摘除を行うことで致死性の自己免疫性肝炎を発症するBALB/c系統のPD-1遺伝子欠損マウスを用いた。昨年度までの研究で、肝炎の劇症化は、腸内細菌叢に起因するToll様受容体リガンドによって誘導されるInterleukin (IL) -18産生誘導を介した免疫応答が関与し、IL-18を産生する主な細胞がT細胞活性化を担う樹状細胞であり、IL-18に依存して活性化T細胞がCXCR3発現エフェクターT細胞へと分化誘導されることを明らかにした。そして、肝組織では、CXCR3のリガンドの一つであるCXCL9の発現が上昇し、CXCR3発現細胞のCXCL9に依存した肝への移行が肝炎劇症化に必須であることを明らかにしている。本年度は、さらに、IL-18を産生する樹状細胞が、自らIL-18受容体を発現し、IL-18がautocrineにその産生誘導に働くことを明らかにした。一方、肝組織でのCXCL9発現細胞が、クッパー細胞/マクロファージであり、これらの細胞のCXCL9発現誘導がIFN-γではなく、TNF-αによって誘導されることを明らかにした。また、この劇症肝炎マウスモデルにおいては、血清TNF-α濃度が上昇しているが、抗TNF-α抗体による治療が有用ではなく、肝臓局所でマクロファージや活性化T細胞からautocrine あるいはparacrineで産生されるTNF-αによるCXCL9の発現誘導が、抗TNF-α抗体治療によって十分に抑制できないことがその原因として考えられた。
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