研究課題/領域番号 |
23590974
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 雄一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30457014)
|
研究分担者 |
木曽 真一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40335352)
渡部 健二 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50379244)
筒井 秀作 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10359846)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Gab1 / シグナル伝達 / MAP kinase / 肝細胞癌 / 分子標的治療 |
研究概要 |
【背景及び目的】私共はこれまで様々な受容体型チロシンキナーゼの下流で機能するアダプター蛋白Grb2-associated binder 1(Gab1)を同定し、その生理学的な意義について検討してきた。そこで、今回の検討では、ヒト肝細胞癌におけるGab1の関与ならびに、同分子の肝細胞癌治療の標的分子としての可能性について検討した。【方法】1)アデノウイルス過剰発現系を用い、Gab1過剰発現がヒト肝癌細胞株の細胞増殖及び足場非依存性細胞増殖に与える影響について評価した。2)Gab1過剰発現あるいはsiRNAノックダウンがヒト肝癌細胞の増殖シグナル(ERK及びAKT)に与える影響について評価した。3)Gab1ノックダウンヒト肝癌細胞株をヌードマウス皮下に移植し、Gab1発現抑制がin vivoの 腫瘍増殖に与える影響について検討した。【結果】1)Gab1過剰発現は、肝癌細胞株の細胞増殖及び足場非依存性細胞増殖を有意に増加させた。(p<0.001)また、SHP-2結合部位やPI3 kinase 結合部位に変異を施したアデノウイルス感染細胞では、スフェロイドコロニー形成が有意に抑制された。(p<0.001)2)Gab1過剰発現はHB-EGF依存性の増殖シグナル(ERK1/2及びAKT1)を増強させ、逆にノックダウンは増殖シグナルを抑制した。3)Gab1ノックダウン肝癌細胞株(KD)は、対照細胞株(Control)に比し、ヌードマウスにおける皮下腫瘍形成能が有意に低下していた。(移植後15日目腫瘍重量:0.23±0.10g (KD) vs 1.09±0.45g (control);p<0.01)【考察】Gab1は、ERK及びAKTシグナルを介して、ヒト肝癌細胞の増殖・癌化能を制御している可能性が示唆された。【結語】Gab1は、ヒト肝細胞癌治療の新規分子標的になる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の検討では、ヒト肝癌細胞株の増殖におけるGab1の役割について、in vitro 及び in vivo において検討を行った。この結果、1)Gab1は、ヒト肝癌細胞株の細胞増殖及び足場非依存性細胞増殖を正に制御していること 2)この制御には、Gab1を介した、MAP kinase ERKや、AKTを介したシグナルが重要な役割を果たしていること 3)Gab1は、in vivo において、ヌードマウス皮下腫瘍モデルにおけるヒト肝癌細胞株の腫瘍増殖を正に制御していること を明らかにしてきた。これらの検討により、少なくともヒト肝癌細胞株において、Gab1は、その腫瘍増殖を正に制御していることが明らかにすることができた。従って、当初の研究目的は、概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
私共は、これまでGab1欠損マウスが、心臓、胎盤、皮膚等の発生段階における異常により、胎生致死になることを明らかにしている。そこで、臓器特異的Cre-LoxPシステムを用いて、肝臓特異的にGab1を欠損させてマウスの作製を行い、本マウスの樹立に成功している。一方で、ヒト肝細胞癌の発生・進展過程においては、肝障害・炎症・再生・線維化等のいくつかのステップが関与している。そこで、この複雑なステップにおけるGab1の関与を明らかにするために、肝臓特異的Gab1欠損マウスを用いて、それぞれの過程における同分子の役割について検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究費の使用計画としては、マウスを用いた検討がメインになると考えられるため、マウス組織の解析に必要な、遺伝子解析(定量的real time RT-PCR法を用いた)や、ウエスタンブロット、免疫組織学解析(抗体等)に関する試薬購入にあてる予定である。
|