研究課題
【目的】昨年までの検討で肝細胞Gab1欠損がマウス肝線維化を増強し、その過程において肝細胞Gab1欠損が肝線維化促進作用を有するケモカインCCL5誘導を引き起こし結果的に肝線維化を増強させることを示した。最終年においては、肝細胞Gab1が肝内慢性炎症→線維化(肝硬変)→肝発癌過程において病態促進に働く分子機序について検討を行った。【方法】1)肝特異的Gab1欠損マウス(KO)及び対照マウス(WT)に対して、BDLを施行し、コラゲナーゼ還流法を用いて、肝細胞分画及び非実質分画に分離し、それぞれの遺伝子発現を比較した。2)KO及びWTマウスより、初代培養肝細胞を分離し、LPS刺激によるCCL5発現誘導について検討を行った。3)マウス肝細胞細胞株BNL-CL2に対して、siRNA を用いてGab1をノックダウン(KD)し、2)と同様にLPS刺激を行い、肝細胞Gab1欠損が、LPS刺激による肝細胞内炎症シグナルに与える影響について検討を行った。【成績】1)BDL後の肝細胞分画、非実質分画の遺伝子発現の検討では、肝細胞分画においては、WTに比しKOにおいて、CCL5遺伝子発現の亢進を認めた。一方で、非実質分画においては、WTとKOの間に、CCL5遺伝子発現の差を認めなかった。2)KOマウスからの初代培養肝細胞を用いた検討では、KOではWTに比しLPS刺激による肝細胞CCL5遺伝子発現の亢進ならびに同培養上清中のCCL5蛋白発現亢進を認めた。3)Gab1KD細胞においてはコントロール細胞に比し、LPS刺激による代表的な炎症シグナルであるNF-kBの活性化が有意に増強していた。【考案及び結語】本研究期間における検討において、肝細胞Gab1が慢性炎症による肝内炎症シグナル制御を介して、肝線維化さらにはその後の肝発癌に保護的に作用している可能性が示唆された。
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