研究概要 |
平成23年度は、肝細胞癌におけるRUNX3の発現とNotchシグナルの関連について検討を行った。肝細胞癌cell line HepG2, Hep3B, Huh1, JHH1, JHH2, JHH4, HLE, HLF, PLC, SK-Hep1においてRUNX3のmRNAと蛋白発現をRT-PCRとWesternでそれぞれ検討した。肝細胞癌cell line HepG2, Hep3B, Huh1, JHH1, JHH2, JHH4では、RUNX3の発現は消失、HLE, HLFではごく軽度の発現、PLC, SK-Hep1では発現が確認された。多くのcell lineにおいてRUNX3の発現は低下または消失していた。肝癌組織においても、免疫組織染色を行い、RUNX3の蛋白発現は、半数以上の肝癌組織において低下していた。HCCにおけるNotchシグナルは、Hep3B, Huh7において検討し、いずれの細胞でも、HES1, Hey1を介していた。このシグナル活性化は、γセクレターゼインヒビターによって阻害できる事も確認した。RUNX3のcDNAとsiRNAのクローニングも終了し、RUNX3 cDNAの細胞への導入を行うと、Notchシグナルの低下,HES1,Hey1へのシグナルの低下がおこる事も確認した。また、RUNX3 siRNAを肝癌細胞へ導入し、RUNX3のmRNA、蛋白発現がノックダウンされることも確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き研究をすすめる。血管新生を誘導するNotchシグナル制御機構の解明を進める。臨床検体におけるRUNX3発現やNotchシグナルの活性化機構の解析も進めていく。【Notchシグナルをターゲットとした血管新生抑制療法】のin vivoでの検証を行う。DCP産生肝癌cell line (Hep3B, PLC, Hep3B-Δ2GGCX)、非産生肝癌cell line (HLE, SK-Hep1, Hep3B-WTGGCX)をSCIDマウス腹腔内及び皮下に接種し、2, 4, 6, 8週で剖検し、腫瘍系、重量より腫瘍の進展を評価する。血管新生は、CD31, エンドセリン抗体による免疫染色で評価する。Notchシグナル活性化も検討する。上記モデルにDCPmabを腫瘍接種後2週より週に一度マウス尾静脈より投与する。投与量は、ベツキシマブ血中濃度(約100μg/ml)とマウス血液量(約3ml;体重25g)より算出し、100, 300, 500μgでの検討よりスタートする。検討3での検討結果と予備実験結果より抗体濃度の再検証を行い、同様の実験を繰り返す。Notchシグナルを阻害するγ-セクレターゼ阻害剤(Merck 565765)は、腹腔内投与し、DCPmabと血管新生抑制効果を同様に比較する。
|