研究課題/領域番号 |
23590975
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
白羽 英則 岡山大学, 大学病院, 講師 (40379748)
|
研究分担者 |
大西 秀樹 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30595468)
中村 進一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (70514230)
能祖 一裕 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10314668)
山本 和秀 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90140491)
|
キーワード | 肝細胞癌 / Notchシグナル / 血管新生 / RUNX3 |
研究概要 |
RUNX3の消失がEMTを進行させることの証明: RUNX3の導入は、肝癌細胞Hep3B, Huh7においてEpithelial-Mesenchymal transition (EMT)を抑制することが証明できた。Hep3B, Huh7では、RUNX3の遺伝子導入により、E-cadherinの発現が増強した。逆にN-cadherin, vimentinの発現は低下した。肝癌組織における検討でもRUNX3の発現とE-cadherin発現は正の相関を示し、N-cadherin及びvimentinの発現はRUNX3と負の相関を示した。 肝癌におけるEMTとDCPの相関: DCPの産生は、EMTを進行させる因子のSPARC発現と相関する事が肝癌組織及び肝癌細胞Hep3B, Huh7を用いた検討で判明した。肝癌組織において、DCP発現、SPARC発現、vimentin発現は、相関していた。 DCPの血管新生亢進作用: DCP産生をGGCX遺伝子導入によりコントロールしたHep3B細胞を用いて、in vitro及びマウスへの接種実験によりDCP産生が肝癌の血管新生を亢進させることを証明した。 DCP抗体の血管新生抑制効果の証明: in vitroにおいてDCP抗体が血管内皮細胞の環腔形成を阻害することが証明できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RUNX3発現コントロールにより、Notchシグナルが制御され、EMTが進行することが証明できた。 また、EMTの進展とDCPの産生について、in vitro及び肝癌臨床検体を用いた解析により相関関係を証明できている。これらの成果より、RUNX3の発現は、Notchシグナル、EMT制御、DCP産生と関連することが証明された。 GGCXの発現も遺伝子導入により制御でき、その制御によりDCPの産生コントロールが可能となった。 更にDCP産生と血管新生の変化も確認できている。 DCP抗体の血管新生抑制効果もin vitroではあるが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
Notchシグナル活性化の肝癌進展における効果の検証: これまでの研究においてRUNX3発現がNotchシグナルを制御することが証明できたが、更にNotchシグナル下流のEMT制御因子およびその効果についての検証を進める。EMTの制御では、E-cadherin、N-cadherin, vimentinが変化することが証明できているが、更に臨床兼対数を増やして解析を勧める。また、EMTの進展には、SPARCの発現が関与している可能性が高いことがこれまでの検討で判明しているため、SPARCの発現制御機構の解析を肝癌培養細胞及び肝癌臨床検体を用いて解析を進める。 SPARC発現制御機構の検討: Notchシグナル下流にはSPARC発現制御が行われている可能性が高く、またSPARC発現はGGCX活性により制御されている可能性が高い。そこで、SPARCの発現制御をGGCX活性を変化させた細胞を用いて検討する。具体的にはGGCXによるGla化のSPARC発現制御に与える影響について検討を行う。 DCP抗体の血管新生抑制効果の検討: DCP抗体(DCPmab)を用いて、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の細胞増殖能、細胞移動能の評価をする。DCPmabの血管内皮細胞の環腔形成能阻害についてもその効果を確定する。更に、GGCX遺伝子導入細胞をマウスに接種し、DCPmabの腫瘍形成、血管新生に与える効果についての検討を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、269,291の繰り越し金が発生した。これは、主に培養器具などの消耗品を当該研究室の共用品を利用した事が原因であり、研究の遂行は概ね順調にできている。 研究費は、その大部分を消耗品で使用する。その内容は、実験試薬、培養器具、実験動物で使用する。その他研究遂行に必要な物品の購入にあてる。平成24年度の繰越金は主にシグナル伝達解析の抗体購入にあてる予定である。 研究成果の発表のための英語論文の英文校正や、論文受理の際には、出版費用にも使用する。
|