研究課題/領域番号 |
23590980
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
直江 秀昭 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (30599246)
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研究分担者 |
佐々木 裕 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (70235282)
横峰 和典 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (60530128)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
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キーワード | 消化器癌 / 浸潤・転移 / 細胞骨格 / 細胞運動 |
研究概要 |
細胞周期の進行は関連分子のリン酸化と分解という二つの生化学的反応によって厳密に制御されている。後者を担うユビキチンリガーゼの1つであるAnaphase promoting complex (APC)は分裂期の制御において重要な役割を担っている。Cdh1は、このAPCの活性を維持している活性化因子の一つであり、このようなAPC調節作用に加えて、近年、Cdh1の機能の新たな一面が報告されている。例えば、APC/Cdh1は分裂を終えた細胞が大部分を占めるニューロンにおいても発現し、活性を持っており、軸索の伸長とパターン化を促進することが明らかになった。さらに重要な報告として、申請者はCdh1が細胞骨格と細胞運動の制御に関与しているという生理的機能を明らかにした。本研究では、消化器癌の発生・進展において細胞周期調節因子Cdh1が果たす役割を明らかにすることを目的としている。まず、複数の大腸癌細胞株におけるCdh1の発現量の比較をウエスタンブロットにて行った。その中で、DLD-1細胞でCdh1発現量が多いことが明らかになった。そこで、この細胞においてCdh1発現量を抑制し、形態の変化について検討した。実験にあたり、2種類の異なるCdh1 siRNAを作成した。このsiRNAをDLD-1細胞にトランスフェクションし、ともに効率的にCdh1の蛋白質発現量を減少させることを確認した。なお、Cdh1抑制細胞とコントロール細胞の増殖を比較検討したところ、Cdh1抑制による増殖の変化は見られなかった。このようにしてCdh1発現を抑制したDLD-1を固定し、アクチン(ストレスファイバー)の免疫染色を行った。その結果、Cdh1抑制細胞ではコントロールと比べて、ストレスファイバーの明らかな減弱を認めた。この結果より、大腸癌細胞においても、Cdh1が形態形成に重要な役割を持つ可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の成果に加え、Cdh1発現を減弱させた大腸癌細胞株の増殖と、細胞形態について検討した。しかし、他の細胞株を用いた確認ができておらず、交付申請書に記載した細胞運動の評価には至っていない。理由は実験時間の確保が不十分であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
Cdh1蛋白質発現量を変化させた大腸癌細胞株における細胞形態の評価を引き続き進める。また、同様に細胞運動についての検討も行う。さらに、Cdh1発現量を変化させた細胞の抽出液を用いたcDNAマイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析を行う。その結果にpathway解析を統合することで、Cdh1の上流、下流に位置する関連分子群を明らかにする。 上記実験と並行して、Cdh1のリン酸化部位を変異させたマウスを作成し、その解析を通して、Cdh1リン酸化の意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
・動物実験としてのマウス購入費用、維持費用。 ・cDNAマイクロアレイ解析費。
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