研究課題
宿主肝細胞に組み込まれたHBV遺伝子は宿主遺伝子とキメラを形成し,その遺伝子発現を修飾し,細胞の増殖や維持に影響を及ぼしうることが明らかになっている.このHBVと宿主のキメラ遺伝子が肝細胞増殖に及ぼす影響をin vitroで検討し,肝発癌におけるHBV組み込みの意義と癌治療の標的分子としての基礎的検討をすることを目的とした.我々が開発したHBV-Alu PCR(Minami et al. Genomics 1995)を用いて,慢性肝炎から肝癌まで種々のstageのB型肝炎組織でHBV組み込みを同定し,HBV-宿主キメラ遺伝子をクローニングした.これらの塩基配列をGenBankで検討し,HBV組み込み近傍にある宿主遺伝子の同定を行った.AXIN1,CTNND2,ODZ2などの細胞増殖に関連した遺伝子の近傍にHBV組み込みのある症例のあることがわかった.1症例につき1-6種類のクローンが同定でき,一部で定量を行ったところ,肝細胞5,000個あたり50-70個の同じ組み込みを持つ細胞集団がクローナルに存在した.さらにキメラ遺伝子の同定を高頻度にする目的で,linker-primerを用いたHBV-宿主キメラ遺伝子の同定方法(Tamori et al. Clin Can Res 2005. Ferber et al. Oncogene 2003.)を試みた.この方法はHBV特異的なプライマーを使用しないため,組み込みクローンの同定の為のスクリーニングがやや煩雑であることが判明した.我々が行っているHBV-Alu PCRによるHBV組み込みの解析より,クローン同定の効率は劣るが,我々の方法では,同定できないクローンも得られる可能性があり,やや今回の目的にはそぐわない方法であるが,状況によっては使用可能であると思われた.
2: おおむね順調に進展している
組み込みHBVのクローニングが進行している.
23年度に引き続き,キメラ遺伝子の同定,クローニング,さらに肝炎,肝硬変などの非癌組織,および肝癌組織からのcDNAの同定を進めていく.
遺伝子増幅,クローニング,細胞培養などの消耗品への使途が主になる.
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Cancer Lett
巻: 310 ページ: 140-147