研究課題/領域番号 |
23590985
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
田守 昭博 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30291595)
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研究分担者 |
榎本 大 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20423874)
村上 善基 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00397556)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | HBV / 遺伝子変異 / 再活性化 / 核酸アナログ |
研究概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)感染既往例における肝炎発症の頻度と対応策を明らかにするため、大阪市立大学医学部附属病院にて前向き調査に登録されている症例を再評価した。対象はHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性の109例である。疾患の内訳は関節リウマチ65例、悪性リンパ腫17例、造血幹細胞移植を含む移植例13例、悪性腫瘍への化学療法6例、膠原病8例である。モニタリング中にHBV DNAが検出された症例をHBV再増殖と判定し、核酸アナログによる治療介入を実施するプロトコールである。現時点にて関節リウマチにて1例(2%)、悪性リンパ腫(リツキシマブ併用化学療法)にて3例(18%)、造血幹細胞移植例にて2例(25%)のHBV再増殖を観察した。再増殖例に治療介入したが、3例(各疾患にて1例づつ)にトランスアミナーザの上昇を認めた。しかし重篤な肝炎に発展した症例はなかった。再増殖したHBVの塩基配列を解析した結果、全例がHBV-genotype Cであり治療介入時のHBV DNA量は3.1-4.7 Log/mlまで増加していた。トランスアミナーザ上昇3例中pre-core/core-promoterに変異があった症例は2例であり、肝炎を発症しなかった症例では同部位の変異は1例のみ認めた。治療介入時にHBs抗体が陽性であった2例ではHBs抗原決定基である ’a’ determinantにアミノ酸置換を有する変異を認めた。以上より今年度は、各種疾患とその治療法によるHBV感染既往例におけるHBV再増殖の頻度を明らかにした。またHBV再増殖時の肝炎病態にHBV遺伝子変異が寄与する可能性を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当症例の登録および解析は順調に進んでいる。本研究の準備期間に登録した症例を解析し、微量なHBV病因について論文報告と学会発表を行い、肝疾患領域のみならず他領域の臨床医にも注目された。2011年3月末にて170例の登録例に至り、病院内での協力体制も確立できたものと考えている。一方、肝組織を用いた解析については臨床サンプルの収集が進まないため研究が停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ウイルス側の病因を主として解析したが、次年度は患者側の病因について遺伝子多型との関係を解析する計画である。HBVに関する既報を参考として幾つかの遺伝子多型を解析の準備を進めている。一方、初年度において肝組織の収集は進まず、研究の方向転換を視野に考えている。初年度の成果について国内外の学会発表と論文作成を予定している。(金沢での第48回肝臓学会では、ワークショップの演題として採用されている。)
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子多型解析のための費用を主に使用計画をたてている。95万円初年度の研究成果について論文投稿の準備資金(英文論文の作成についてnative speakerへのコンサルト諸費を含む)にも振り分ける計画である。15万円今年後の学会発表として6月に金沢、10月には神戸にて開催される肝臓学会へ参加予定であり、研究費を旅費に割り当てる計画である。20万円
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