研究課題/領域番号 |
23590985
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
田守 昭博 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30291595)
|
研究分担者 |
榎本 大 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20423874)
村上 善基 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 病院講師 (00397556)
|
キーワード | HBV / 再活性化 / 長期予後 |
研究概要 |
肝細胞内の微量HBVが再活性化する病態は、種々の疾患と治療内容に応じた安全でかつ効率的なモニタリング法の確立が必要と考えられる。そこで平成24年度は前向きに登録・観察している症例についてHBV再活性化の頻度・HBV関連マーカーの推移を解析した。【対象と方法】モニタリング中の203例 (HBs抗原陽性37例、HBs抗原陰性・HBc抗体陽性あるいはHBs抗体陽性166例)である。対象疾患は関節リウマチ(RA)98例、悪性リンパ腫(ML)30例、造血幹細胞移植(HSCT)20例、腎移植12例、膠原病疾患17例、リツキシマブ以外の化学療法26例である。【結果】観察期間中央値22ヶ月(2-61ヶ月)においてHBs抗原陰性例からのHBV再活性化はRA症例2/85 (2%)、ML症例 3/26 (12%)、HSCT症例 4/19 (21%)であった。再活性化例の登録時HBs抗体価は陰性2例、50未満6例、100以上1例であり、再活性化時には1例を除きHBs抗体は陰性であった。再活性化までの期間はHSCT実施2例にて1年以上、他の治療例では1年未満であった。再活性化例を除く118例におけるHBV血清マーカーの推移は、HBs抗体陰転化は3例(ML, RA, 尋常性天疱瘡)、この3 例を含めてHBc抗体陰転化は8例(RA4, HSCT1)であった。いずれの症例も輸血等による抗体輸注ではなかった。モニタリング例では、HBs抗原の有無に関わらずHBV DNAが定量された時点でエンテカビルを投与し、重篤な肝障害は阻止できた。【結語】HBs抗原陰性RA、ML症例にて1年未満に再活性化が発生した。一方、HSCT例では移植後1年半以降にもHBV再活性化が発生した。再活性化していない症例にても登録時のHBs抗体やHBc抗体の陰転化を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当症例の登録および解析は2012年3月末にて203例となり、順調に進んでいる。肝炎ウイルス診療に不慣れな他領域の臨床医にも情報を発信し、HBV再活性化のガイドラインを普及できたものと考える。一方、HBV再活性化のメカニズムに関する研究には遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
HBV再活性化のメカニズムを解明するための研究を計画している。ひとつは、再活性化したB型肝炎ウイルスの全塩基配列を決定し、共通する塩基の特徴を明らかにする。もうひとつは、HBV再活性化した症例の臨床を背景を解析する。特に遺伝的背景についてHLA遺伝子多型を決定し、HBV再活性化の起こらなかった症例との比較検討を行う予定である。さらに末梢血液中のマイクロRNAの発現パターンを解析し、HBV再活性化の新たなバイオマーカーの探索を行う計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
再活性化したB型肝炎ウイルスの遺伝子解析と対象例のHLA遺伝子多型の解析に60万円 マイクロRNAの解析に40万円 国内出張費(学会等)に20万円 論文作成に15万円 を予定している。
|