研究課題
本研究では、肝細胞内の微量HBVが再活性化する病態を明らかにするため種々の疾患と治療内容に応じた安全でかつ効率的なモニタリング法の提示と積極的な介入方法を探索した。2008年から前向きに登録・観察した症例の内、平成25年度は血液悪性疾患に関するHBV再活性化の特徴を解析し、最終年度として全ての登録例の集計結果を報告する。【対象と方法】モニタリング中の229例 (HBs抗原陽性50例、HBs抗原陰性・HBc抗体陽性あるいはHBs抗体陽性179例)である。対象疾患は関節 リウマチ(RA)103例、悪性リンパ腫(ML)34例、造血幹細胞移植(HSCT)23例、腎移植12例、膠原病関連疾患22例、リツキシマブ以外の化学療法35例である。【結果】観察期間中央値24ヶ月(2-61ヶ月)においてHBs抗原陰性例からのHBV再活性化はRA症例3/88 (3%)、ML症例 3/30 (10%)、HSCT症例 5/19 (26%)であった。再活性化例の登録時HBs抗体価は陰性2例、50未満8例、100以上1例であり、再活性化時には1例 を除きHBs抗体は陰性であった。再活性化までの期間はHSCT 3例とRA 1例において1年以上、残る7例では1年以内であった。血液疾患にて再活性化したHBV遺伝子を解析した結果HBs抗原決定基に高率に変異を検出した。モニタリング例では、HBs抗原の有無に関わらずHBV DNAが定量された時点でエンテカビルを投与し、重篤な肝障害は阻止できた。【結語】HBs抗原陰性ML症例にて1年未満に再活性化が発生した。一方、HSCT例やRAでは治療実施後1年半以降にもHBV再活性化が発生した。再活性化の病態に関して宿主の免疫応答(HBs抗体)とともに変異HBVの存在が関与している可能性が示唆された。
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Journal of Gastroenterology and Hepatology
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