研究課題
研究の最終年度である今年度は、慢性肝疾患進展抑制法の確立に向けたより臨床へ還元できる可能性を秘めた種々のデータを得た。Angiotensin-II (AT-II) 受容体阻害薬 (ARB)、リバビリン、およびインターフェロンを用いた3剤併用療法による肝線維化抑制効果につき有用な知見を得た。即ち、すでに臨床で広く使用されている薬剤を用いて単剤よりも2剤を併用した方が肝線維化抑制効果は強く、さらに3剤を併用投与するとインターフェロンは低用量であっても非常に強力な肝線維化抑制効果を示すことを見出した。その機序として活性化肝星細胞抑制や血管新生阻害作用が重要な役割を果たしていることを明らかとして論文化した。しかしながら、インターフェロンは患者背景により血球減少や間質性肺炎を来すことがある。従ってより低侵襲である治療法の開発も重要な課題である。そこで今回我々は、注射剤を含まない経口内服薬による組み合わせによる検討を行った。今回の研究で有効性が示された組み合わせとしてARBと選択的アルドステロン阻害薬 (SAB)の併用投与が同様に強い肝線維化および肝発癌抑制効果を示すことを見出し、論文として報告した。さらに、本年度は直接的レニン阻害薬であるアリスキレンや糖尿病薬として広く使用されているDPP-IV阻害薬が肝線維化抑制効果を示すことを見出した。さらに、ARBの線維化抑制機序として自然免疫との関係を明らかにすることができた。即ち、TLR-4がAT-IIのシグナル経路と密接な関連を持ち肝線維化伸展に重要な役割を果たしていることを明らかにして論文として報告した。これら本研究で明らかにし得た新規発見は、全ての効果が臨床的濃度にほぼ対応したレベルで確認されていることから近い将来臨床応用が可能であり、慢性肝疾患患者の予後改善にきわめて有用であると考えられる。
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