研究課題/領域番号 |
23590992
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
松崎 靖司 東京医科大学, 医学部, 教授 (50209532)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10468639)
池上 正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40439740)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 助教 (60532687)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 内科 / ウイルス / インターフェロン |
研究概要 |
慢性C型肝炎(HCV)感染の主要な治療であるインターフェロン(IFN)/リバビリン(RBV)療法を受診し,SVRの判定を受けた患者でも,後に再燃が見られるケースがあり,治療継続の必要性ならびに早期陰性化に対する過剰治療や医療費削減を考慮するにあたり,解決すべき重要な課題である。本研究の目的は,再燃する理由として,血液中のHCV陰性化後でも,肝細胞中にはHCVが残存しており,治療終了後に残存HCVの増殖が再開するためであろうとの仮説を検証することである。一般的に,IFN/RBV療法は,治療開始から,RNA陰性化,SVR判定,治療終了までに,計24~72週間の期間が必要である。そのため,今年度は,HCV患者に対する治療ならびに血清サンプルの収集,今後の生化学分析のセットアップを中心に行った。また,今年度は,これまで我々が確立してきた細胞中の脂質異化(ベーター酸化)の指標となるアセチルカルニチンについて,HCV感染患者血清中の定量を行った。その結果,健常人と比較して,HCV感染患者の血清中アセチルカルニチン値は減少しており,肝臓での脂質異化が低下していることが示唆された。さらに,IFN/RBV療法を受診後では,血清アセチルカルニチン値は増加していた。これらの結果から,HCV感染患者における脂質代謝の改善と抗ウイルス療法によるウイルス量の減少とに関連性があることが示唆された。したがって,血清中のアセチルカルニチン値の測定は,肝細胞中のHCV増殖状態を把握する指標の一つとして役立てられる可能性があり,次年度からも引き続きサンプル数を増加し,検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,IFN/RBV療法を受診した慢性C型患者のサンプル採取,ならびにサンプル中の各血清指標と残存ウイルス指標の検討を行うセットアップ期間を予定していた。治療とサンプル収集,ならびに肝組織内脂質代謝の血清指標の検討は,予定どおり計画を進行できているが,震災復興財源の確保として,交付金の1部の支払いが年度途中まで不明であったため,生化学的分析を伴う研究については,やや計画から遅れが生じている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度までの計画を引き続き,慢性C型肝炎患者に対するIFN/RBV治療を行い,治療開始前から,血清ウイルス陰性化,SVR判定時,治療終了時の血清サンプルを収集,ならびに再燃の有無について等の臨床診断情報の収集を行う。また,各患者の治療進行度に応じて,採取した血清サンプルについての各種生化学的指標の分析を順次,開始,追加していく予定である。さらに,肝組織中のウイルス量と肝細胞中での脂質代謝変化との関連性,ならびに肝細胞から血液中に放出される関連物質について検討できる様に,in vitroの実験系を確立して,臨床データの裏付けを行って行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,HCV感染患者の血清サンプルの分析を,順次,開始,追加する予定である。そのうち,肝細胞内でのHCVならびに増殖に必要な関連酵素が血清中でも同定できるかを検討するため,HCVコア蛋白やHCV遺伝子非構造蛋白質の測定キット,また,各種血清脂質を定量する測定キットや試薬等の分析に必要な消耗品や試薬等の購入に当てる予定である。また,今年度は,培養肝細胞を用いて,HCV感染量と細胞内脂質量ならびに脂質代謝との関連性について検討を加える予定であるため,肝細胞や細胞培養・分析に必要な試薬の購入を予定している。
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